« 神谷バー | トップページ | 本『2011年 新聞・テレビ消滅』 »

本『闘うプログラマー』

闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達
『闘うプログラマー 新装版
ビル・ゲイツの野望を担った男達』

著 G・パスカル・ザカリー
日経BP社

WindowsNTの開発を追ったノンフィクション。
『カッコウはコンピュータに卵を産む』と同様、
PC関連の名著として有名らしく、新装版として復刊。

物語の中心となるのはデビッド・カトラー。
1988年10月、DECからマイクロソフトに引き抜かれ
開発のリーダーとなる。

本書では開発に携わった多くのプログラマーにインタビュー。
彼らの容貌、どんな青年期を送ったか、どこでコンピューターに出会ったか
に始まり、それぞれの“闘い”を詳細に描いている。
あまりに多くの人が出てくるので、ひとりひとり区別ができないのだが、
大勢の人がNTの開発によって私生活までめちゃくちゃにされていく。

当初、1991年3月にゴールドマスター完成予定だったNTは、
マイクロソフトがOS/2を捨て、Windowsへ路線を変更。
そのため、NTは、新しいファイルシステムNTFS、
グラフィックインターフェース、WindowsやDOSとの互換性など
多くの課題を乗り越えなくてはいけなくなる。
カトラーは、1991年10月のコード完成予定をあきらめ、1992年4月に延期。
1991年10月のコムデクスでまだ未完成のNTを披露。
1992年10月に最初のベータ版をリリース。
「あまりにも大きく、あまりにも遅い」とビル・ゲイツに言われたNTの
スピードとサイズの改善が続き、
1993年5月のリリース予定はさらに延期され、
1993年7月にリリースされる。

この間、多くのマイクロソフト社員は仕事に追われ、
家族や恋人との関係を悪化させていく。
給料は安かったものの、マイクロソフト株は上昇を続け、
ストック・オプションにより、富を手にする社員も増える、
だけど、家には帰れない。

「「カネを使うのは、気分をすっきりさせるためだ」と言う。しばらくすると、
また新しい車がほしくなった。ポルシェよりも高いスポーツカー、ロータス・エスプリだ。
自宅にはテニス・コートをつくったが、ここでテニスをする時間がとれないと嘆いていた。
成功をおさめている別のプログラマーは、ワシントン湖畔の豪華な家にひとりで
住んでいるが、始終オフィスで寝ていて、自分は「ホームレスだ」と言っていた。」

プログラマーだけでなく、ビルド・ラボやテスターたち
裏方の苦労や、まだ少ない女性社員の話もおもしろい。
(女性プログラマーたちは掲示板を立ち上げ、
ヌードのビットマップ画像の表示に反対した。)

この本を読む限り、マイクロソフトで働きたくない、と思う。
カトラーに罵倒され、バグに苦しみ、
お金はあるのに、家族とは会話もできない、
リリース予定は延期されるばかりで終わりも見えない。
それでも、すばらしいコードによって問題を解決するなど、
プログラマーならではの喜びもよく描かれている。
最後のバグをめぐってリリース直前まで奮闘する様子は
まるでサスペンス映画。
「終わったよ」と家族に電話を入れるテスターの姿に
こちらまで達成感を感じてためいきが出た。


◆読書メモ

「自分たちがつくったドッグフードを食べる」、つまり、
「自分たちがつくったプログラムをつかう」

プログラマーを名乗る人はほとんどなく、名乗るような人は変人だとみられていた。
オランダを代表する元物理学者のプログラマーが、婚姻届の職業欄に、
プログラマーと書いた。そのような職業はないという理由で、
受け付けを拒否され、落胆したという。

「コンピューター・ゲームは新人の気概を試したり、
ベテランのハッカー同士が遊んだりするためのものだ。一般の人に
遊んでもらうために書かれたわけではない」と、ある評論家が評している。

マイクロソフトは、十分な研修をしないことで有名だ。
「泳げないヤツは沈めばいい」というのが、新人のルールだった。

インターフェースに魅力を感じるプログラマーの多くがそうであるように、
プログラミングは神秘的な活動だとみている。プログラミングにはたしかに
論理が必要だが、論理は表面の薄皮にすぎず、その奥には不可思議な力がある。
「魔法の言葉を、この小さな箱にむかって唱える。
呪文が正しければ、自分の力を実感できる」

どんなにいそがしくはたらいていても、ビルドの仕事では、
ひたすら待つしかない時間ができる。退屈しのぎに、みんなでテスト用マシンに
テレビの連続ドラマ、『ツイン・ピークス』の登場人物の名前をつけてみたり、
NT開発物語が映画化されるときに、主演をだれにすべきかを話題にしたりした。
カトラー役はジャック・ニコルソンで決まりだということになった。

「コンピューターは情け容赦のない批評家だ」と、コンピューター科学の
草分けのひとり、ジョセフ・ワイゼンバウムは語っている。設計者を評価するのは
仲間の設計者だが、プログラマーを評価するのは最終的には、機械なのだ。

« 神谷バー | トップページ | 本『2011年 新聞・テレビ消滅』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/31464578

この記事へのトラックバック一覧です: 本『闘うプログラマー』:

« 神谷バー | トップページ | 本『2011年 新聞・テレビ消滅』 »