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本『「萌え」の起源』

「萌え」の起源 (PHP新書 628)

『「萌え」の起源』 時代小説家が読み解くマンガ・アニメの本質
著 鳴海 丈
PHP新書

人間でもなく、女性でもない、中世的なヒロイン、
『リボンの騎士』、『ふしぎなメルモ』、『バンパイア』などに見られる
“メタモルフォーゼ(変身)”への強い憧れ、
といった手塚治虫作品の分析から
変身するヒロインの系譜を“女剣劇”や『琴姫七変化』に遡り、
闘う女性ヒーロー、志穂美悦子まで登場し、“萌え”の起源を探る。

手塚治虫のヒロイン観についての分析はおもしろいと思うし、
もともと日本人には“小さくて丸っこくてかわいい”ものを愛でる心があるとか、
無生物であるかないか、人間であるかないか、人種や性別も
ボーダレスなものを受け入れる文化であるという指摘も、その通りだと思う。
しかし、それが“萌え”だとされると、ちょっと違うかなと。
そもそも著者自身が本気で“萌え”を理解していない感じで、
手塚治虫以外のマンガやアニメに関しては分析が弱すぎる。

印象に残ったのは『DRAGON BALL』など少年ジャンプ系の
マンガに見られる“友情と呼ぶには強すぎる絆”の話。
著者は時代小説家なので、その原典を股旅物など江戸文学に
求めるんだけど、西部劇や特撮との比較もあったりして、
ここでもヒーロー像の分析としては中途半端。
日本人の正義感、ヒーロー像、というテーマはもっと掘り下げ可能だと思う。

『おふくろさん』騒動ばかりが晩年の印象になってしまった川内康範が、
『レインボーマン』の“死ね死ね団”の生みの親だったとはびっくり。
手塚治虫と酒井七馬と『新寶島』の話もちゃんと読んでみよう。

著者の鳴海丈の名前に覚えがあると思ったら、
コバルト文庫でファンタジー小説を書いてた人かー。
(といっても、1冊も読んでないんだけど。)
アダルト小説を経て、今は時代小説が中心とか。
あのころのコバルト小説作家のその後って追ってみたいきも。


◆読書メモ

佐藤忠男をはじめ何人かの映画評論家が指摘していることですが、
日本の映画ヒーローは「恋愛をしない」のです。ヒーローの相手役、恋人として
登場する女性はみな「第二の母親」的な要素が非常に強く、
悩んだり暴走したりする主人公を陰から支える役割でしかない。
励ましたり、ご飯を作ったり、看病したりするだけで、
愛し愛される存在ではないんですね。

現在のTVゲームには「闘うヒロイン」が欠かせませんが、その元祖は
アーケードゲーム『ストリートファイターⅡ』(1991年)に登場した
香港の美人刑事・春麗でしょう。キャラクターデザイナーは
角川アニメ『幻魔大戦』(1983年)のカンフー少女タオをヒントにしたと述べていますが、
春麗のトレードマークは左右のお団子ヘアです。
興味のある読者は、DVDレンタルもある『女必殺拳』第1作を見てください。
冒頭に、まがうことなくお団子ヘアの李紅竜が登場します。

『ポケモン』と並んでアメリカやヨーロッパで大ヒットした日本製アニメに、
竹内直子・原作の『美少女戦士セーラームーン』(1992年)があります。
これは、実写特撮の人気番組『スーパー戦隊』シリーズ(1975年)の設定を
少女向けアニメに置き換えた作品―というのが日本人の感覚ですが、
イタリアでは心理学者から「この作品を見ると、女の子が同性愛者になる」
とクレームが付けられたそうです。

「正義と真実を守るため」の部分は、原語版では
「for Truth, Justice, and the American Way」
となっています。つまりスーパーマンにとっての正義とは真実は、
多分に「アメリカ的な生き方」の上に立脚しているのです。

『妖星ゴラス』で描かれているテーマ―地球と人類を救うのは、
政治的イデオロギーや宗教ではなく、科学者のもつ理性である、
とする「科学良導主義」的な考え方は、この作品をはじめ
数多くの特撮映画を円谷英二とともに手がけた本編監督、
本多猪四郎の生涯を通じた願いでもありました。

このような感想は、在日外国人の書いた本やインタビュー記事を
読んでいると、よく目にします。「日本人と接すると、最初のうちは
すごく親切にしてくれて、こんな親切な人間が地球上にいたのかと
思うくらいなのに、いざ溶けこんで日本社会の一員になろうとすると、
『壁』があって、そこから先へはなかなか入れてくれない。
日本人というのは、実はとっても冷たいんじゃないか」と。


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