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本『ネット検索革命』

ネット検索革命

『ネット検索革命』
著 アレクサンダー・ハラヴェ
青土社

本書のテーマを簡潔にいうと、
「検索エンジンがいかにわれわれ人間を変えたか」。
グーグル様が私たちの生活をこんなに便利にしたという本や、
グーグル脅威論のような本は多いが、検索が与えた社会的影響について、
ここまで論じた本はめずらしいのではないか。

(と思ったけど、この本ではいろんな論文が引用されているので、
検索エンジンによる社会的影響というのは結構、重要テーマらしい。
巻末の文献表で私が知っている本だと、『googleとの闘い』と
有名なキャス・サンスティーンの『インターネットは民主主義の敵か』くらい。)

論文調の文体はやや読みにくいし、「グーグル・ダンス」、「グーグル爆弾」
といった用語がポンポンでてくるので、用語解説はついているにしても、
ある程度、検索エンジンについての理解がないとわかりにくい。
しかし、そういう点を差し引いても、指摘されていることは非常に興味深く、
おもしろいところに付箋を貼っていったらキリがなくなってしまった。
(以下、引用がやたら長くてすみません。)

著者は言う。
「人間相手の質問とは違った形で質問を入力することになる
検索エンジンに慣れてしまうと、人間の思考形態や
コミュニケーションの様式も変化すると考えて間違いないのではないか?」
グーグルによって、私たちは思考方法やコミュニケーションまで
影響を受けている、という考えは突飛なようでいて、納得できる点も多い。

いろいろ指摘されている問題点の中で、特に印象に残ったのは、
ウェブは決してフラットではなく、検索エンジンが格差を助長している、という話。
「ページランクおよび、それに類する「名声強化的」な検索アルゴリズムは、
明らかに現状の不均衡を増大させ、既存の人気ネットワークを固定化している。」

それから、これは前から思っていたことだけど、検索エンジンというより
ネットによって、どこまでがプライベートな情報なのかが大きく変わっている
という話。SNSによって、高校の友達や大学の友達、会社の同僚などの
ネットワークはオンラインでもオフラインでもつきまとう。でも、それっていいこと?

明日から検索をやめることなどできないし、そんな気もないけど、
いつかグーグル様にしっぺ返しされるだろうと、ずっと思っている。
ググって見つかることが全てでも真実でもないし、
どこまでグーグルに洗脳されているのか再認識するのによい本。

「あるレベルにおいて、検索エンジンがわれわれを、
世界の特定の見方へと導いていることは疑いない。」


◆読書メモ

垂直的ファイリング(これが図書十進分類法の発明者によって
開発されたことは驚くことではないだろう)

人々が検索エンジンを使って何をしているのかを知ることで、
われわれは人々が全体としてどのようにふるまっているのかを
理解できるのである。

むしろ問題は、ユーザー自身が、自分の探していることを
正確に知っているとは限らない、というところにある。
もし自分の探していることが正確に分かっているのならば、
検索する必要さえないかもしれない。
おそらく理想の検索エンジンは、ユーザーの望んでいるものを
理解するだけではなく、ユーザー自身が意識していない欲望をも知っているのだ。

ジョン・ペリー・バーロウが1996年の「サイバースペース独立宣言」で
強調したように。この「宣言」では、サイバースペースは誰もが平等に
声を挙げることができるところだとして、インターネット文化の、政府による
干渉からの独立を謳っている。
「私たちが今作りつつあるのは、人種、経済力、軍事力、身分などに伴う
特権や偏見なしに加入することのできる世界です。そこでは誰もが、どこでも、
自分の信念を公表でき、沈黙や同調を強制されるおそれはありません。」

インターネット上の「下品な」表現を違法とした通信品位法を
憲法違反だと判断した最高裁判所は、「インターネット上のコンテンツは
人間の思想と同じだけ多様である」とする、以前の判決を繰り返し、
放送メディアに対するような規制をインターネットにはするべきではないとした。

結局問題は、ウェブや検索エンジンが「開かれた、平等な遊技場」を
形成するかどうかでは、おそらくない。クーパーは新聞紙上で、
「コミュニティは組織から、善を引き出すのか悪を引き出すのか」
と問うたが、問題はこれでさえない。
ウェブ上では、目立つ情報とそうでない情報があるというだけのことだ。

「表現の自由を持っているのは、メディアの所有者だけだ」とは、
リーブリングの有名な箴言である。だが彼は間違っている。
メディアを所有しているだけでは不十分で、それを読んでくれる読者が必要なのだ。

ウェブのもたらした最大の変化は、この多種多様な(天体の詳細な解説から、
スケートボード事故のグロテスクな映像まで)情報の増大や、
こうした情報がかつてなく様々な人に利用可能になったことではない。
真の変化は「注目のテクノロジー」、すなわち、個人が特定のコンテンツに
注目するあり方にある。

マス・メディアは、われわれにどう考えるかは語らないが、
何について考えるかは語る。言い換えると、マス・メディアは
「議題設定」を行って、何が重要であるかについて、
人々に共通認識をもたらすのだ。そして、ウェブがもたらした
最も重大な変化は、「注目の配分」のあり方を変えたことである。
ウェブはフラットではないにしても、
テレビや新聞よりはるかに多くの選択肢を与える。

情報探索者は「最適」よりも「満足」を求めるとした
ハーバート・サイモンは、新たな情報源が利用可能になった際の
「注目経済」についても予見していた。サイモンは1971年に、
「情報の豊かさは注目を稀少にする。情報源の過多の中で、
注目を効率的に配分しなくてはならなくなる」と書いた。
近年のネットワーク型メディアの発達、そして2000年代に起きた
アマチュアの作るメディアコンテンツの氾濫は、
「注目」が空前の稀少性を持つに到ったことを示す。

「注目の稀少性」(これが検索テクノロジーの動因となっている)
からすると、全ての人が全ての人にアクセスするというのは、不可能なのだ。

検索エンジンについての技能の有無が、ネット上で幅広い情報に
アクセスでき、多様な情報源に基づいて望ましい意思決定ができる人と、
もっとも容易に見つかる情報に依存している人とを、分けるのである。
収入、人種、そして特に教育と、ウェブ上での情報発見能力とは、
相関している。もし検索エンジンが、知識やコミュニケーションに関する
格差を強調・拡張する方向に作用するなら、これは重要な社会的課題と言える。

検索エンジンで満足な結果が得られなかった人は、より容易に
結果を得られるものへとトピックを変えることが多い。ここで問題なのは、
客観的に測定はしにくいのだが、検索エンジンがわれわれの指向を、
より検索の観点から考えるように仕向ける可能性だ。
検索エンジンを長く利用しているうちに、検索する語の選択には
習熟するだろうが、他の思考方法よりも検索を優先するようになる可能性がある。

誰でもウェブ上にコンテンツをアップロードできるが、「ウェブ上では、
存在するとは、検索エンジンに表示されることなのである」。

サイバースペース内では、人々はよりメトロポリタニズム(大都市主義)や
コスモポリタニズム(世界主義)へと向かうと見られていた。
複数のアイデンティティを同時に持ち、オンライン上で容易に別の
アイデンティティを提示できると考えられたからである。だが実際には、
検索エンジンは、われわれを多くの点で「村の生活」へと逆戻りさせている。
検索エンジンの結果に基づいて公然たるアイデンティティが形成され、
これが同僚や、友人や、果ては家族を見る見方にまで影響を与えている。
ブログ、SNS、写真共有サイトといった「露出的」なテクノロジーの発展で、
検索エンジンは、われわれが付き合いのある人のポートフォリオを
作るのを手助けしてくれる。多くの場合、それがなければ少なくとも
世界の大部分に対して隠されていたであろう生活の部分の情報を、
知ることができるのだ。

「グーグル・ファイト」では、二つのものをどちらが検索ヒット数が多いか
戦わせるサイトで、例えば「ペン」と「剣」では「ペン」が勝利する。

過去の歴史は消せる方が得だ。多くの人には人生の中で、過去を葬り、
リセットして、新たなスタートを切る時期が来る。こうした変化は普通の
ことであって、ほとんど儀式化されている。高校を卒業して大学に入る時、
高校時代の出来事やパーソナリティを故意に捨て去る人は多いだろう。
新たな場所で、新しい仲間と付き合うことで、大学は自分を再発見する
機会を与える。しかし、フェイスブックや他のSNSのために、
こうした生まれ変わりが難しくなっている。検索エンジンがわれわれの
生活のほとんどに侵入して来ると、個人的な歴史を切り離すことが難しくなるのだ。

このまま行くと、坂を転げるように、
グーグルが誰よりもあなたのことを知ることになる。
あなた自身よりもだ。

フェイスブックで、1200人に友人登録されている人がいたとして、
この人は高い評判を有しているのだろうか、それとも、
他人から注目を浴びているのだろうか?
「評判」も「注目」も商品化され、交換可能となり、つながりの程度を測る能力自体が、
追求に値する価値(バウマンの言う「リキッド・モダニティ」時代の、
究極の「持ち運び可能な富」)となった暁には、この両者の区別が大きな問題となる。

無線タグ(RFIDタグ)、GPSなどの空間にまつわる情報技術は、
この動きを現実世界に持ち込み、われわれを「ウェブ」の中に導いている。
持ち物すべてに無線ビーコンが付けば、鍵がどこにあるか(ソファーの下)、
お気に入りの小説がどこにあるか(友人の家)、配偶者がどこにいるか(パブ)、
グーグルが教えてくれるだろう。

人生の記録は、もしそれを体験したのと同じ速度でしか再現できないのであれば、
ほとんど意味を持たないだろう。

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