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本『ウルトラマンになった男』

ウルトラマンになった男

『ウルトラマンになった男』
著 古谷敏
小学館

初代ウルトラマンのスーツアクターをつとめた古谷敏さんの回想録。
表紙をめくると、素顔の古谷さんの写真が載ってるんだけど、
大部屋クラスとはいえ、東宝の俳優さんだけあってなかなかのハンサム。
身長が高くてやせていて、細くて長い手足。
『ウルトラQ』のケムール人を演じたことで、
「君をイメージしたヒーローだから、ぜひウルトラマンを」と話がくる。
しかし、いつか映画でメロドラマを演じることが夢の古谷さんは、
マスクで顔を隠して、テレビに出ることに悩む。

初代ウルトラマンはすべて初めてづくしなので、
マスクをかぶって演技することの苦しさは著者以外、誰も理解してもらえない。
少し動いただけで、汗だくになるし、息が苦しくて長時間は動けない。
特殊効果である火や水は命にさえかかわる。
休憩時に人のいないところにいって、毎日こっそり吐いていたなんて話も。

「ウルトラマンは宇宙人だよ」という以外、なんの情報もなく、
どんな演技をしたらいいのかもわからない。
腰を落としたポーズは、ナイフをかまえたジェームズ・ディーンがモデルだとか、
毎日、鏡の前で300回、スペシウム光線のポーズを練習したとか、
著者の努力が伝わってくるエピソードも。

ゴジラアクターで有名な中島春雄さんがネロンガを演じたときは、
本気のアクションがとても大変で、
「ウルトラマンが戦った怪獣で一番強かったのは?」という質問に
「中島さん」と答えている。
また、『ウルトラセブン』で念願のメロドラマを演じさせてもらったときの
相手役がまだ少女の松坂慶子だというのも驚き。
映画からテレビへと時代が移っていくことの寂しさも
文章のあちこちで語られている。

著者はその後、『ウルトラセブン』で隊員役を演じた後、役者を辞め、
怪獣ショーなどのプロモーション会社を設立。
1991年に会社を解散してからは、消息不明となり、
成田亨展に顔を出したことから、ひし美ゆり子から連絡が入り、
彼女たち、昔の仲間の応援があって、この本が出版されたという。
(最近だと『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』などに特別出演している。)

そういう経緯のせいか、会社の解散やその後の詳しい事情にはまったく触れず、
基本的に美しい昔話がつづられている。
全編が「○○さんは、いい人だった。僕は大好きだ」といった調子。
もちろん、嫌なこともたくさんあっただろうけれど、
人間、何年もたって、昔の仲間に暖かく迎えられて、
そうそう悪いことなんて語る気になどなろうはずもない。

ウルトラマンを辞めようと思いながら乗ったバスで、
ウルトラマンに夢中になっている子供たちに会って、
決心を変える話なんて、ちょっと出来すぎのエピソードなんだが、
ウルトラマンなんだから、それでいいかなという気がする。


◆読書メモ

「それから、仕事場でのことだけどね、私も仕事をしていたからわかるんだけど、
仕事中はどんなに苦しくても、つらくても、一緒に働いている人たちに
嫌な思いをさせてはいけないよ。楽しく仕事をやらないとね、いいものはできないよ。
嫌なことがあっても、顔に出したり、態度に出したり、人にあたったり、
物にあたったり、大きな声を出したりしては、絶対にだめだよ。
どんなに苦しくても、笑顔でいつもいるようにね、それが一番いいことなんだよ」

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