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本『劒岳 点の記』

劒岳―点の記 (文春文庫 (に1-34))

『劒岳 点の記』
著 新田次郎
文春文庫

映画を見てから読んだ原作。
映画もそうとう地味な話だけど、原作はさらに地味。

前半で剱岳の下見、後半ではまず地形偵察、
撰点(三角点の建設場所を選ぶ)、木材を運搬して造標(三角点を建てる)、
そして、やっと測量(山の頂上など各地点から三角点を計測)。
そのたびに、立山周辺の山に登り、測量の際には
雲の切れ間を待つという、途方もない労力がかけられている。
一歩一歩山を登るようなこの本のスローな展開は、
測量隊の地道な努力とシンクロし、そこがこの本のおもしろさだと思う。

最大のクライマックスである剱岳登頂ですら、
かなりあっさり書かれているが、
剱岳にかける男たちの静かな情熱はちゃんと伝わってくる。

主人公である柴崎測量官は、軍の上層部には圧力をかけられ、
少ない予算や期限に苦しめられたり、県の職員に冷遇されながら、
グチひとつ言わず天幕暮らしを続け、測夫たちの苦労をねぎらう、
日本のお役人の鑑みたいに描かれている。
映画では浅野忠信がその存在感をあまり発揮せず、
最初、浅野忠信だとわからなかったくらいなのだが、
役柄を考えると、この静かな意志を感じさせる演技で正解だったのだなと。

生田くんの生意気さや長次郎の親子の葛藤とか、
剱岳登頂の順番とか、結構映画オリジナルの部分も多い。
山岳部との交流は原作のほうがずっとすっきりしていて好感がもてる。

ほかの山岳小説を読んだことがないので、
“山岳小説の白眉”かどうかは判断できないが、
天幕で野草の入った味噌汁を飲んでみたいなという気分になりました。

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