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本『キンドルの衝撃』

キンドルの衝撃

『キンドルの衝撃』
著 石川幸憲
毎日新聞社

タイトルは『キンドルの衝撃』だが、テーマとしては
電子書籍は新聞を救えるのか、
デジタル化によってアメリカメディアはどう変わるのか
といったあたりの内容。

前半のアメリカの新聞の衰退については
『次に来るメディアは何か』『2011年 新聞・テレビ消滅』など
ほかの本でも読んでいるので目新しさには欠ける。
ただ、デジタル化に力を入れているニューヨーク・タイムズと
課金モデルで成功しているウォールストリート・ジャーナル、
それぞれの取り組みがわりとハッキリわかった。

電子書籍については、キンドルの日本上陸(2009年10月)、
iPadの発表を受けて、ここ数ヵ月で日本でも大きな話題になっている。
個人的にはiPhoneで青空文庫を読んだときから、
デジタル化の流れはもう止まらないだろうと思っている。
しかし、電子書籍がメディアを救うかどうかはまた別の問題な気もする。

ひとつには電子書籍のレイアウトはどうあるべきか、という問題。
ニュース記事ならもうネットでテキストを読むだけでも十分だ。
マガストアのような雑誌のレイアウトをそのままiPhoneにもってきたアプリは
むしろ読みにくい。コミックもiPhoneで読むと大ゴマの感動が薄い。
(iPadやキンドルの大きさならアリかもしれない)
そもそも、紙で読まないものをデジタルにしたからって読むのだろうか。

その一方で、産経新聞アプリは意外に読みやすい。
(拡大、縮小のインターフェースは使いにくいけど)
多くのニュースサイトがブログ対応になってしまって、
どのニュースが大きくて、どのニュースが小さい取り扱いなのか、
よくわからなくなってしまった今、新聞のレイアウトというのは
実にわかりやすいんだ、と再確認したり。

デジタル化したからといって紙の書籍がすぐになくならないだろう
とは、今のところ共通認識のような気がする。
しかし、たとえば、映画『半分の月がのぼる空』を見て
原作を読みたいと思ったときに、すぐダウンロード購入できたら、
それはすごく便利だろう。(かわり青空文庫で『銀河鉄道の夜』を読んでみた)

本書の著者も元通信記者なので、メディアは生き残れるか、
という視点から電子書籍を論じているが、
そもそも新聞とか雑誌という形でメディアが生き残る必要があるのか、
ジャーナリズムはなくならないだろうけど、その形は変わるのではないか。
とかとか、いろいろ考えながら読みました。


◆読書メモ

エリザベス・アイゼンスタイン『印刷革命』

「本の最大の特色は、読み始めると消えてしまうことだ。
本を読んでいる最中に、インクや糊や紙や綴じは気にならない。
著者の世界にはまり込むわけだ。4年前にキンドルを開発し始めた時に
デザインの第一目標にしたのが、このコンセプトだ。
キンドルは消えなければならない。
そうしないと、読者が著者の世界に入れないことになる。」
(ジェフ・ベゾス)

電子書籍の売り上げ実績(AAP調べ)を見ると、
06年が5400万ドルだったが、翌年には6700万ドルに増えた。
共に前年比では24%前後の増加であった。
だが、08年に総売り上げが1億ドルの大台を超え1億1300万ドルに
急上昇した。68.4%の増加率であった。

「今一番売れているのがシューズだが、10年前には想像もできなかった」
(ジェフ・ベゾス)

「タブレット(電子端末)が新聞の将来だ」
(ルパート・マードック)

メディア研究機関「ポインター・インスティチュート」(フロリダ州)の
リック・エドモンズ研究員は、新聞業界が初期の段階で
インターネットの正体を見誤ったのではないか、と危惧する。
「私見だが、新聞社は活字とインターネットを必要以上に二者択一の
問題として捉えてしまった。これだけ多くの人たちが印刷版とオンライン版
(通常、職場で仕事中に読んでいる)の両方を読むとは誰も予想していなかった。

1つ確かなことは、ネット新聞では
印刷版の日刊紙に必要な規模の編集局が維持できないことだ。

最大の問題は、現在の新聞ウェブサイトが原則的に記事見出しの
羅列でしかなく、印刷版特有の有機的なレイアウトが欠如していることである。
この意味で印刷版をデジタル化した電子新聞-ウェブ版ではなく
専用端末で読む電子版-に将来性があるのではないか。
レイアウトなども印刷版と本質的に違わないので、キンドルDXなどの
大型パネル搭載の端末を使えば、新聞らしさを味わいながら
記事を読むことができるだろう。ネットに飛躍するのではなく、
印刷版の半歩先に新聞の将来があるように思われる。

フックスバーグ 紙の新聞のようにページごとに紙面が現れ、
新聞らしくレイアウトされた記事を縦横に読む。あるいは
関心のある記事だけを選択して読むことも可能だ。
例えば、ニューヨーク・タイムズをこの画面で見ると、
独特のフォント、紙の見た目や感覚が再現されている。
スキッフのシステムは、同紙の伝統に気配りしているので、
読者は違和感なく読むことに集中できる。
-そんなこだわりは本当に必要なのだろうか。
フックスバーグ 新聞や雑誌のフォントや規格・デザインを忠実に
再現するシステムは、ビジネスの面で重要だ。新聞社や出版社が
スキッフというプラットフォームの採用を検討する際に、安心感を
抱いてもらえるだろう。自社のプロダクトの個性が尊重されているからだ。
(ギルバート・フックスバーグ・スキッフ社長)

町のレコード屋は大型店の進出で廃業に追い込まれた。
その一方で、タワーレコードのニューヨーク(イーストビレッジ)店などは、
ヨーロッパの最新CDを限定販売したりして音楽好きの若者のメッカに
なっていた。タワーレコードは、1980年代に日本への進出を果たした。
米国のタワーレコードは、2004年に倒産し再建を試みたが失敗。
2006年に廃業したことは記憶に新しい。日本のタワーレコードは
米国本社から独立して、別企業になっていたので元親会社の
清算による影響はなく、現在、日本全国で81店舗を運営している。

ニューヨーク・タイムズの時価総額(2009年12月28日現在)は
17億7000万ドルなので、1976億ドル以上のグーグルからすれば
簡単に買える(ニューヨーク・タイムズの場合にはオーナー家が
複数議決権のあるA株を保有しているので、実質的に乗っ取りが
できない仕組みになっている)。要するに、グーグルやマイクロソフトが
その気になれば、メディア企業の買収は赤子の手をねじるようなものだろう。
もしこのシナリオが実現すれば、新聞社などがペーパーレスの
デジタルメディアへと大変身する機会になる。

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