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本『明日をどこまで計算できるか?』

明日をどこまで計算できるか?――「予測する科学」の歴史と可能性

『明日をどこまで計算できるか?
「予測する科学」の歴史と可能性』

著 デイヴィッド・オレル
早川書房

私たちはどこまで未来を予測できるか。
天気、医療、経済を中心に、科学的予測を考察する。

科学的にみえる本書だが、なんとギリシアのデルポイから
話は始まる。いけにえを捧げ、神託を伺っていた時代から、
未来予測はどう変わったのか。

天動説は円を中心にしたとても美しい説だったので、
科学者たちは天動説に固執し、円では説明できない
惑星の動きをなんとかこれに当てはめようとした。
その後、地動説は惑星の動きを数学によって求められるようになった。
では、すべてのものごとは計算で求められるのではないか。
著者は基本的にこれを否定する。
天気予報にしても、最初の観測モデルの数値を微妙に変えるだけで
その後の結果は大きく変わってしまう。誤差を正しく計算することはできない。

数式はほとんどでてこないものの、セル・オートマトン、
バタフライ効果、ランダムウォークなどの用語が次々に出てきて、
正規分布やら、べき乗など数学の知識がないと話についていけない。
なので、正直なところ、私には本書は難しすぎて、半分も理解していないのだが、
デルポイの神託から鳥インフルエンザまで、登場するエピソードがおもしろい。
つまりは、未来を予測するのがなぜ難しいのか、
という話なのだが、最後まで飽きずに読める。


◆読書メモ

ピュタゴラスは、快さを感じる音同士の関係は、いずれも数によって
表わすことができると気づいた。そして、もっとも豊かな表現力を
もつ芸術である音楽が数に還元されるのであれば、
それ以外のものにもこの原則がことごとく当てはまると考えた。
ピュタゴラスの宇宙(コスモス)では、恒星や惑星、月、太陽は
入れ子状態になった同心の透明な天球に納められており、
これらの天球すべてが「宇宙の調和(ハーモニー)」を奏でるように
地球のまわりを周回している。
ピュタゴラスはこの調和を「天球の音楽」と呼んだ。

「科学が追究する実体は数学によって表現できるものでなければならず、
数学はわれわれに可能なもっとも正確で明確な思考である」
プラトン

プラトンは、ある日夜空を見上げていて溝に落ちた数学者ターレースの
話をしたことがある。使用人の少女がターレースを助けて、
こう言ったという。「自分の足元に何があるかさえ見えないというのに、
どうやって空で何が起きているか知ろうと言うのですか?」

ピュタゴラスは惑星が地球を周回するとき天体の音楽を聞くことが
できると主張した。ケプラーはそれをさらに進めてその音楽の音符も
割り出した。彼はこう言った。「地球は『ミ、ファ、ミ』と歌う。
このことだけからも、私たちの住むこの地球には悲嘆(ミザリー)と
飢饉(ファミン)があふれていることが了解できる」

気象学者は突如として、自分たちが軍事行動の計画立案を
行なう人々にとって欠かせない人材となっているのを知った。
実際に、気団の間の境界を意味する「前線」という用語は、
第一次世界大戦の軍事用語から取られたものだ。

リチャードソンは、6時間分の予測計算に約6週間かかっている。
「いつしか遠い未来に、天気よりも早く計算を進められるように
なるかもしれない。しかし、それは夢だ」とリチャードソンは結論している。
リチャードソンが思い描いたのは、「コンピューター」がたくさんいる
「予報工場」のような大きなホールだ。リチャードソンの言う
「コンピューター」とは計算尺を手にした人々のことで、
それぞれが大気の小さなセル一つで変化の計算を担当している。
壁には世界地図が描かれており、中央の演壇には一人の人物が
「オーケストラの指揮者のように」いて、誰も遅れることがないよう
見張っている。リチャードソンは、自分の方法では、
天気の進行に遅れないようにするためだけでも、
6万4000人の「コンピューター」が必要だと見積もった。

1941年、ナチスの気象学者だったフランツ・バウアーはヒトラーに、
その年のソ連は、暖冬か例年通りの冬になると言った。
ヒトラーは軍事侵攻を決断したが、十分な準備をしていなかった
ドイツ軍の兵士たちは、それまでにないような厳しい冬に、
凍えて死んでいった。その戦況を知らされたバウアーは、
「観測が間違っているに違いない」と言った。

短期間の天気だけを問題とするなら、気象モデルの長期的な精度を
それほど気にかけることはないし、誤差の原因は学究的なテーマになるだろう。
しかし、解決が不可能そうなモデル誤差が理由で、来週の天気予報が
外れるなら、地球温暖化が生物圏に与えるさらに複雑な影響を、
数十年も前に予測できると考える根拠はどこにもないのが問題だ。

「人はかつて自分たちの未来は星の中にあると思っていた。
今ではそれが遺伝子の中にあることを知っている」
ジョームズ・ワトソン

ビル・ゲイツがシアトルのセーフコ・フィールドに野球観戦に行ったら、
同じく観戦している人たちの平均純資産は4倍に増える。

「問 その計算が正しいことを証明できますか?
答 数学者にしか、できません」
アイザック・アシモフ『ファウンデーション』

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