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本『いちご同盟』

いちご同盟 (集英社文庫)

『いちご同盟』
著 三田誠広
集英社文庫

自殺を夢見る少年と野球部のエース、余命いくばくもない少女、
十五歳の3人の物語。

主人公の良一は、小学五年生で自殺した子の記事を読んだり、
現場である団地に足を運んだり。
愛読書が原口統三『二十歳のエチュード』、
長沢延子『友よ私が死んだからとて』、奥浩平『青春の墓標』、
いずれも自殺した若者たちだ。

私も十代の頃、
「僕は死なない」という詩を残して十三歳(だったと思う)で
自殺した少年の詩集とか、
『二十歳の原点』とか、くりかえし読んだので、
この主人公にはひどく共感した。
本当に死にたいような理由がある訳じゃない、
「いつでも死ねる」程度になめた人生観というか、
死と対極におかないと生きてる気がしないというか、
まあ、一種の中二病みたいなもんなのだろう。

原作は読んでないけど映画『カラフル』の真も十五歳で自殺しているし、
「明日死んじゃいたくなる」という女の子も登場するから
今でもきっと十代はそうなんだろう。
(『いちご同盟』は1990年の発売。)

「俺の中には多情な血が流れてるんだ」なんて十五歳で言う
野球部のエース、羽根木徹也や良一に比べると、
ヒロイン直美はやや印象が弱い。
むしろ、良一の両親、死んでいく娘を見守る直美の父など、
まわりの大人たちがちゃんと描かれて感心する。
いわゆる「僕を理解してくれない大人たち」も
大人であるゆえに苦悩している。

『亡き王女のためのパヴァーヌ』から
サティ『ジムノペティ第一番』、
そして十五番ソナタ『田園』へ。
良一が弾くピアノの曲は彼の成長の証でもある。

自殺を夢見ていた少年へ突きつけられる
「生きろよ」という言葉の重さ。
昔、十五歳だった大人たちを含めて、
すべての十五歳が読むべき傑作青春小説。

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