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本『ロボット兵士の戦争』

ロボット兵士の戦争

『ロボット兵士の戦争』
著 P・W・シンガー
日本放送出版協会

アメリカを中心に軍事用ロボットの現状をレポート。
掃除用ロボット『ルンパ』を作っているアイロボット社が、
地雷除去用ロボットを開発しているという事実を、この本で初めて知りました。

イラクやアフガニスタンの上空を飛ぶ、無人偵察機プレデターは、
アメリカ本土から遠隔操作されている。「パイロット」たちは、
任務が終わると、家に帰って子供と遊ぶことができる。

地雷除去のように兵士の安全を確保するためのロボットだけでなく、
攻撃用の武器を搭載したロボットも登場している。
人間をロボットが殺す、という事実。
やがてロボットは自立性をもって「敵と判断したら撃つ」ようになるかもしれない。
これは圧倒的科学力をもつアメリカにとって優位なのか。
ネットワーク化された戦争は、軍の指令系統や上下関係も変化させる。
システムが故障しないという保障はない。敵にハッキングされる危険性は?
自立性をもったロボットはやがてターミネーターになる日がくるのか。
ロボットとロボットが戦うようになったとき、これは「誰の」戦争なのか。
自分が命を落とす危険性がない戦争はスポーツとなる。
リスクなき戦争はむしろ解決を長引かせるのでないか。

軍事ロボットの倫理観からロボット三原則、
ターミネーターな未来の可能性まで、広く論じていて非常に刺激的な本。

◆読書メモ

ロボットというデジタル戦士の台頭は、戦争の致死性だけでなく、
誰が戦うか自体を変えるという点で、さらに重要な意味をもつといっていい。

ルンバは、同社が1997年に米空軍用に設計したロボット「フェッチ」を
進化させたものだ。フェッチは滑走路からクラスター爆弾を片付けたが、
ルンバはソファの下の綿ゴミをきれいにする。

パックボットが実戦デビューしたのは運命の日、2001年9月11日だった。
世界貿易センタービルが破壊されて、飛行は全面禁止となったため、
アイロボットのエンジニアたちはロボットを車に積んで、
救助復旧作業を手伝うべくグラウンドゼロに向かった。

(アイロボット社が上場したとき)ナスダックの取引開始ベルを鳴らしたのは
一台のパックボット。ロボット初の快挙だった。

ウォリアーにUSBが搭載されたことで、センサーや銃や戦闘用テレビカメラ、
あるいはモバイル・レイブパーティー用のiPodとスピーカーなど、
ユーザーが接続したいものを接続できる。長期的戦略は、他社は
プラグイン周辺機器市場を重視するだろうが、ロボットのプラットフォームに
関してはアイロボットが市場を独占するというものだ。
マイクロソフトがソフトウェア産業でやったことを、
アイロボットはロボット産業でやろうとしている。

「兵士がプレイボーイ誌のグラビアを、ロボットの側面に貼るようになった。
第二次世界大戦中に兵士が爆撃機にピンナップを貼り付けた、
あれの二十一世紀版だ」

1944年8月12日、こうした爆撃機の海軍版で、B24爆撃機を改造したものが
出撃した。爆撃機が海峡を越える前に、揮発性のトルペックスが爆発し、
乗員が死亡した。死亡したパイロットはジョセフ・ケネディ・ジュニア、
第三十五代米大統領ジョン・F・ケネディの兄だった。

1944年、戦争の準備に女性が貢献しているという雑誌記事の写真撮影のため、
軍の専属カメラマンであるデービッド・コノバーがこの工場に派遣されてきた。
コノバーは無人機に難燃剤を吹きつけている女性を見つけた。
コノバーはこの女性にモデルの素質があるのではないかと思い、
写真をモデル・エージェンシーにいる友人に送った。
その女性、ノーマ・ジーン・ドハティはやがて、くすんだ茶色の髪を
プラチナブロンドに染め、名前をマリリン・モンローに変えた。

6トントラックに50口径の機関銃を搭載したロボット「クラッシャー」は、
アップルの携帯音楽プレーヤー、iPodTouchで遠隔操作することもできる。

海兵隊のドラゴンランナー(小型の地上ロボット)計画の担当者、
グラッグ・ハインズは次のように説明する。
「コントローラーはプレイステーションをモデルにした。18、9の海兵隊員は
子どものころからそれで遊んでいるからだ」

スティーブン・スピルバーグの映画『マイノリティ・リポート』で、トム・クルーズが
手袋をはめると、彼の指はジョイスティックかマウス同然になり、コンピュータに
指一本触れずに、映像まで含めてデータを呼び出せて管理できる。
ラングレー空軍基地のハイテク戦研究室の責任者、プルース・スターク大佐は、
映画で見たものが気に入った。そこで国防総省は防衛関連企業レイセオンに
現実版の開発を委託。同社は完璧を期してジョン・アンダーコフラーを雇った。
この技術の権威で、スピルバーグに最初に架空のアイディアを提供した人物だ。
そして開発されたのが、「Gスピーク・ジェスチャー技術システム」。
ユーザーはスクリーン上でキー入力し、画像を管理することができる。

米海軍研究局(ONR)は、セグウェイの上にヒューマノイドの胴体を載せた
ロボットを開発中だ。

カーツワイルとラモナが聴衆とやりとりするプレゼンテーションは、
非常に革新的で独創的とみなされており、
2002年の映画『シモーヌ』のヒントにまでなった。
アル・パチーノ演じる映画制作者がラモナに似たAIを作って
完璧な女優にしようとする話だ。

飛躍的に致死性の増した兵器は、同じくらい飛躍的に戦場が「拡大」する
一助となった。古代には、戦闘員の数は通常カバーする地域によって
決められていたので、平均するとギリシャの装甲歩兵ひとりは仲間500人と、
フットボール競技場の面積に相当する地域を担当していたことになる。
南北戦争のころには、兵器の威力も射程も致死性も増していたので、
フットボール競技場規模の戦場で戦う兵士の数はざっと20人だった。
第一次世界大戦のころには、フットボール競技場に兵士はわずかふたり。
第二次大戦のころには、兵士ひとりがフットボール競技場
およそ5つ分を占めた。2008年のイラクでは、780のフットボール競技場に
米軍兵士ひとりという比率だった。

『エンダーのゲーム』

ウェルズの最も重要かつ影響力のある予測は、
おそらく1914年の『解放された世界』に出てくる。
放射性物質でできた新種の兵器を予測し、「原子爆弾」と呼んだのだ。
物理学者は当時、ウランのような放射性元素は何千年もかけてゆっくりと
崩壊することによってのみ、エネルギーを放出すると考えていた。
ところがウェルズは、エネルギーをひとつにまとめて、都市を破壊するほど
強力な爆発を起こす方法について書いた。
もちろん、当時はほとんどの人が一蹴した。
だが、ハンガリー人科学者のレオ・シラードは違った。
シラードはその後、マンハッタン計画の鍵を握り、
ウェルズの本が「核分裂連鎖反応」のヒントになったと語った。

2005年、カートランド空軍基地の空軍研究所・指向性エネルギー局は、
「人員停止・刺激応答(PHaSR)」という俗っぽい名前をもつ新たな思索兵器を
世に送り出した。国防総省の新兵器を「フェザー」と呼びたい一心で、
こんなややこしい名称にしたわけだ。フェザーは『スター・トレック』に出てくる
小型の光線銃で、船長を「気絶させる」のに使われた。
PHaSRシステムはいわゆるレーザー銃で、180メートル先の標的を
気絶させることができ、ロボットに搭載するにはぴったりの非致死性兵器だ。

ロボット工学者はみんな、アシモフの「ロボット三原則」を暗記していて、
それがロボットをめぐる倫理的な議論の基準点となっている。

原子物理学者のフリーマン・ダイソンをヒントに、『ターミネーター』シリーズに
登場する「ダイソン」が生まれたことだ。

「どう見ても鳥には公の教義はなく、飛行のリーダーが指示を出しているわけでも
ないのに、群れるのに必要な自己組織化ができるんだ?」
その問いに答えるのは、研究者のクレイグ・レイノルズだ。
レイノルズは「ボイド」と称する人工の鳥のプログラムを構築した。
陸軍の報告書にもあるように、ボイドたちが群れを作るには、
それぞれのボイドが3つの単純なルールに従うだけでよかった。
「1、分離―ほかのボイドも含めて、物体に近づきすぎない。
2、連携―近くにいるボイドに速度や方向を合わせようとする。
3、結束―自分のすぐ近くのボイドの集団の中心と思われるところに向かう」。
このボイドの基本システムは非常にうまくいき、映画『バットマン・リターンズ』
でもコウモリのリアルなシーンを作るのに使われたほどだ。

軍用ロボットの第一人者であるロバート・フィンケルスタインはこう語る。
「それ(本物のAI)が十億分の数秒以内にまずやりそうなことは、
インターネットに飛び込むことだ。
そうすれば、無限のコンピューティング資源を利用できるから。」

ロドニー・ブルックスが言うには、「当社のロボットはアシモフの原則に
従っているのかと訊かれる。「従っていない」理由は単純だ。
アシモフの原則をロボットに組み込むことができないんだ」。
ダニエル・ウィルソンはもう少し凝った言いかたをする。
「アシモフの原則はすばらしいが、ナンセンスでもある。
たとえば、あれは英語だ。英語なんかどうやってプログラムすりゃいいんだ?」
最後に、ロボット工学の研究資金はかなりの部分、軍が出している。
軍が欲しいのは明らかに、人を殺し、人間の命令には従わず、
自らの命なんて気にかけないロボットだ。
これでは第一、第二、第三の原則もあったものじゃない。

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