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本『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』

『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』
著 大山顕、佐藤大、速水健朗
キネマ旬報社

マンガ、アニメ、映画、小説などに登場する団地を語ろうという本。
もともとはロフトプラスワンで数回に渡って開催されたトークライブで、
大山さんの『団地の見究』をもっている私としては
いつも参加したいなーと思いつつ、行けなかったイベントなので、
書籍化されてとても嬉しい。
さすがに書籍化にあたり、だいぶ構成し直されていると思われ、
トークイベントでは脱線しまくっていたであろう話もすっきりまとまっている。
追記されたらしい注釈の部分にも熱が入っていて、
ここだけでも十分読み応えがあるのでは。

自分の覚書として、出てくる作品をざっとあげると、
大友克洋『童夢』
岡崎京子『リバーズ・エッジ』
安野モヨコ『ラブ・マスターX』
『ウルトラマン』第26話「怪獣殿下 前編」
『ウルトラセブン』「あなたはだぁれ?」
『耳をすませば』
『新世紀エヴァンゲリオン』
『下町の太陽』
『喜劇 駅前団地』
『しとやかな獣』
『家族ゲーム』
『大市民』
『団地妻 昼下がりの情事』
『昭和歌謡大全』
『デジモンアドベンチャー』
『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
『放蕩息子』
横溝正史『白と黒』
『ほえる犬は噛まない』
『ザ・ホード 死霊の大群』
『人生は、時々晴れ』
『コロッサル・ユース』
『お早よう』
『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』
久保寺健彦『みなさん、さようなら』

作品の良し悪しとはまた別に、そこに団地がどう描かれているか
という話が中心なのだが、それでも
『しとやかな獣』から『家族ゲーム』、『昭和歌謡大全』へと続く
映画のオマージュが発見されたり、
『放蕩息子』と横溝正史『白と黒』は同じ大蔵団地を舞台としていることが、
テキサス州立大学の地図アーカイブから分析されたり、
憧れの住宅だった団地が、都市とミニチュアを象徴したり、
やがて高齢化、老朽化、スラムや孤独を現わすものへ変遷していく様子を
『団地妻 昼下がりの情事』のリメイクから読み取ったり。

ある意味、映画やアニメってこういう風にも楽しめるという
見本みたいなトークが繰り広げられていて飽きない。

個人的には団地で生まれ育ったので、
団地にノスタルジックを感じるようなのにはやはり違和感を感じる。
大きくなってからふと見上げた団地がとても美しく、
ああ、団地ってモダニズムの結晶なんだと思ってから団地好きになった。
中学生の頃はどこへ行っても知り合いだらけなわけで、
ちょっと買い食いしていると、同級生のお母さんに見つけられたりした。
今ではもう住民は老人ばかり。
階段やロビーやポストは最近になって綺麗にリニューアルされてしまった。
「もう子供なんていないよ」っていう佐藤さんの話にも同感。
そのうえで、やっぱり団地には惹かれるのです。


◆読書メモ

なぜウルトラマンシリーズに団地がよく登場するのか。
それは、特撮ものの団地って「やられメカ」としての機能もあるんです。
(略)でも、それが団地になると金型がひとつあれば、たくさん作って
並べられます。そんな大量生産可能なセットとして重宝されていました。
加えて、団地を四方に配置すればプロレスのロープにもなります。
ウルトラマンと怪獣の格闘シーンって、プロレスがベースになっている。
あと空手や柔道が混ざっていますね。

佐藤さんと初めて会って団地の話をしたときに
「作り手としては団地ってコピペしやすいから描きやすいんですよね」
っていう話を聞いて、すごい感動したんですよ。実際の団地も、
標準化の技術によって作られている住宅のインフラです。
住宅が圧倒的に足りなかったので、効率的に良い住宅を提供しよう
っていうのが団地なんです。つまり、それってコピペなんですよね。


例えば『E.T.』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で舞台となる
郊外(サバービア)の分譲住宅地。
ある意味でスピルバーグ監督の世代にとっては原風景なのであろう。
しかし、後の世代では『シザー・ハンズ』や『ヘザーズ』といった作品で
不気味な空間として描かれることになる。
このあたり『童夢』の団地表現として繋がるところがあると思う。(佐藤)

「PRUIT-IGOE」。セントルイスにあった巨大団地。
日系人建築家ミノル・ヤマサキの設計によって1956年に完成。
スラムクリアランスの一環として計画されたものの、
この団地自体がスラム化し犯罪の温床となるなどしたため、
1972年に爆破解体された。
前出の『コヤニスカッツィ』にその様子が収められている。
(略)またモダニズム建築の批判者からは、同団地の
爆破解体の日は「モダニズム建築の終焉の日」と位置付けられた。
衝撃的なのは、かの9.11で崩壊したNY貿易センタービルもまた、
ミノル・ヤマサキのデザインであるということ。
彼が手がけた2つの建築が崩れ落ちることで、
2つの時代が終わったのだ。(大山)

ちなみに『耳をすませば』が家族と家の話だったように、
『新世紀エヴァンゲリオン』でもこのシーンでは家族全員が映っています。
シンジがメガネを掛けているというのは、お父さんの存在という意味です。
お父さんのメガネを掛けている息子が見るのが、
お母さんの心を持った人物(綾波レイ)。しかも裸でいる。

押井守さんが84年に監督した『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』
という作品。これはいわゆるループものです。
設定上も技術的にも同じ画が繰り返される作品になっています。
なぜあのストーリーが思い付いたかと言うと、当時はテレビシリーズを
OAしながら劇場版も作らなくちゃいけない環境だったんです。
そのため作画スタッフが全然足りていなくて、例えば、
ものすごく優秀なアニメーターが素晴らしいモブシーンを1カット描いたら、
そのカットを朝、昼、晩で色味を変えて3回使うことのできる
世界観に設定する。すると、シーンが10分以上も埋まることになるんですね。
全体80分の中で何分かは同じカットでも彩色で時間を変えることで
稼ぐことができる!

いかにも団地だなぁ、と思わせる独特の棟間隔は、
この冬至4時間日照原則から来ている。これは1953年に建築省が
定めた基準で、1年で一番日の短い冬至に各住棟が最低でも
4時間の日照がなければならない、というもの。
結果的に、団地は南向きで棟間隔がみんな同じという風景に
なった(南面平行配置という)。後にこの棟が規則的に並ぶ風景が
批判され、部分的に向きを変えたり、折れ曲がったりしている棟を
生み出すことになる。(大山)

「あたしね、この団地で生まれたの」「そうだったんですか?」
「この団地で育って、学校へ通うのもここからで。
もう辞めちゃったんだけどね、職場に行くのもここからで。
フフ、付き合っている男性がいたんだけど、誰もここから
連れ出してはくれなかった」
「あたしはずーっとここの団地の住人。
団地妻にはなれなかったんだけどね。」
『団地妻 昼下がりの情事』

『滝山コミューン1974』原武史
『団地の時代』

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