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本『グーグル ネット覇者の真実』

『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』
著 スティーブン・レヴィ
阪急コミュニケーションズ

著者のスティーブン・レヴィの名前をどこかで聞いたことがある
と思ったら、1995年~2008年までニューズウィークの記者を務め、
現在はWiredのライターだそうだ。
(ビジネス誌を比較したことがないのだが、少なくとも
ニューズウィークは相当きちんとしたネット記事を掲載していた。
私が初めて“インターネット”の脅威について読んだのも
ニューズウィークの記事だった。)

著者は長年培った信頼をもって、グーグル内部の取材を許可される。
サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ、エリック・シュミットの3人、
グーグルオタクにはおなじみマリッサ・メイヤーはもちろん、
すでにグーグルを辞めてしまった人たちも含めて
多くのグーグラーに取材し、戦略会議への出席も許された。

そうしてできたのが本書ということで、
今まで想像でしか語られなかったグーグルの内幕を
だいぶ克明に描いている。
そこに見えてくるのは大企業になってしまって苦悩するグーグルの姿だ。

第1章は検索エンジンとして成功するまでの話なので、
グーグルについて読んだことのある人なら
それほどめずらしい話でもない。(『Google誕生』に詳しい)
それ以降のアドワーズによる莫大な収益、
「邪悪になるな」というモットーがどのように生まれたか、
(そしてその言葉がその後どのようにグーグルを苦しめたか)
Gメール、グーグル・ドキュメント、アンドロイドの誕生、
スカイプ買収をめぐる社内抗争、YouTube買収、中国進出と撤退、
反トラスト法、ストリートビュー、グーグルブックをめぐる法廷騒動、
オーカット、ドッチボールを手がけていながら、SNSに乗り遅れた失態
(元Gメール担当ポール・グックハイト、元グーグルマップ担当
ブレット・テイラーはフレンド・フィードを設立し、フェースブックに買収された。
ブロガーの共同設立者エヴァン・ウィリアムズは
グーグルがブロガーを買収後、放置されていることに愛想をつかし、
グーグルを退社し、Twitterをつくった。
ドッチボールのデニス・クロウリーはその後、フォースクエアをつくる。)

グーグルが必死に大学生気分の会社をめざしたのにも関わらず、
大きくなりすぎた企業が何をするにしても厳しい目で見られたし、
社内も変化してしまったのがよくわかる。

グーグルという会社の透明性と秘密主義という相反する姿、
(ザッカバーグよりはまともだと思ってたんだけど)
ペイジとブリンという創業者2人の変人ぶり、などもおもしろい。

訳者あとがきにあるように、本書の裏テーマは
「グーグルは邪悪になったのか?」である。
気軽には動けない大企業になってしまっても
挑戦しようともがくグーグルは邪悪になりきれないジェダイのようだ。

◆読書メモ

「スタンフォードが宇宙のどんな場所と比べても、
不公平なほど恵まれている理由は、
周囲をシリコンバレーに囲まれていることにある」

ランニングシューズを探すつもりで「ランニング シューズ」と入力すると、
庭の装飾品として売られている陶器製のノーム(大地の精)の置き物が
必ず表示されてしまうのだ。そのノームはたまたまスニーカーを履いていた。
エンジニアたちは連日、ガーデングッズと置き物を区別できるように、
アルゴリズムの微調整を試みたが、ノームが検索結果の1位から
順位を下げることはなかった。
だがある日突然、ノームはまるで奇跡のように検索結果から姿を消した。
1人のエンジニアが遅れて会議室にやってきた。彼はスニーカーを履いた
ノームの置き物を抱えていた。検索結果のトップに表示された置き物を
わざわざ注文したのだ。それはひとつしかないユニークな賞品だったために
在庫切れになり、インデックスから姿を消したというわけだった。

ブリンとペイジはマーケティングに関して独自の考えをもっていた。
1999年にバーニングマンに参加した際、誰かがレーザービームで
近くの丘にイメージを描くのを見て感心した2人は、
月面上に「グーグル」とレーザービームで文字を描けないかと
エプスタインに提案している。

たとえば、ニューヨーク・ポスト紙に掲載された残虐な殺人事件の
記事に関するケース。犯人が死体を切り刻みゴミ袋に詰め込んで
捨てたというゾッとするような文章のそばには、
グーグルが配信したポリ袋の広告が表示された。

ペイジはサラーに建物の内外で採取した空気のサンプルを分析させた。
結果はベイエリア大気品質管理地区や政府が定めた
大気汚染物質排出基準を問題なくクリアしていた。
サラーによれば、「濃度は0.0001ppb(10億分の1)だった」。
ところが「ラリーは報告書を突き返し、『数値をゼロにできないか?』
と聞いてきた」。そこで、高機能空気ろ過システムを作動させるために
超強力なファンを組み立てることになる。

「グーグルという企業組織は、社員が学生気分のまま働くことを
前提にして築かれている部分が大きい」

公開株の募集総額は27億1828万1828ドル。
相当なオタク投資家でない限り、これが一種の数学的ジョークで
あることに気づくのは難しいだろう。この最初の9つの数字は、
数学定数のひとつであるネイピア数と呼ばれる数値から
取ったものだった。

「今後、人々がネット上に何かを掲載する際には
グーグル存在する限り、『この文章は永久に自分について回る』
可能性があることを考慮する必要がある」

実のところ、製品のスピードが秒単位で測れる時点で、
すでにそれは失敗作なのだ。ブックハイトはペイジのオフィスで
初期段階のGメールのデモを行ったときのことを覚えている。
ペイジは顔をしかめると、まったく遅すぎると言った。
ブックハイトは反論したが、ペイジは同じコメントを繰り返し、
ページを読み込むまでに少なくとも600ミリ秒かかっていると指摘した
(10分の6秒ということだが)。
ブックハイトは「そんなことわかるわけないだろう」と頭の中で反論したが、
自分のオフィスに戻るとサーバーのログをチェックした。
読み込み時間はぴったり600ミリ秒だった。
「それで、自分にもできないかテストをしたところ、大した努力もせずに、
100ミリ秒単位の精度で時間を測れるようになった。
つまり、300ミリ秒と700ミリ秒のどちらに近いかぐらいは言えるようになったのだ。
しかも、社内にはこういうことができる人間がいくらでもいた」

一方、隣接する自治体の当局者にはそんな制約はなかったので、
川向こうのラッキーな隣人についてやっかみ半分の冗談をいくらでも
言うことができた。「ハリー・ポッターに『名前を言ってはいけないあの人』という
悪役が出てくるだろう? あれみたいなもんさ」とある自治体関係者は言った。
確かに、地元メディアがようやく敷地内への立ち入りを認められたとき、
彼らは防犯フェンスの向こうに「ヴォルデモート・インダストリーズ」
という看板がかかっているのを確認したのだった。

新型スマートフォンは「ネクサス・ワン」と呼ばれた。
「ネクサス」とは「つながりの集合体」という意味だとケイロスは説明したが、
本当の由来はロボットオタクのルービンの発想からきていた。
SF映画『ブレードランナー』に登場する最新モデルのヒト型ロボット
(「レプリカント」)が「ネクサス6型」と呼ばれていたのだ。
「グーグル機種は6型ではなく、1型(ワン)だけどね」とケイロスは言った。
「これは最初のモデルだから」。

「グーグルゴーグル」と呼ばれる画像データの検索エンジンで、
ユーザーが何かの写真を撮ると―ワインボトル、映画のポスター、
本の表紙、あるいはイームズの椅子など―
普通にキーワードで検索したかのように検索結果が表示された。
(実はネクサス・ワンにはさらにゾッとするような機能がもう少しで
装備されるところだった。あるエンジニアが人の顔を認識する機能を
組み込んでいたのだった。)

最終的に「Jew」という単語の検索結果リストの冒頭に、
スポンサーリンクの形で、
自社のメッセージにユーザーを誘導するリンクを表示した。
リンク先には「不快な検索結果について」と題した文章を掲載し、
「私たちもこの検索結果を不快に感じています」と述べたうえで、
グーグルのアルゴリズムがときに不適切な検索結果を生み出す理由を
詳しく説明したページへのリンクをされに張った。

新名称は「+1(プラスワン)」に決まった。これは技術オタク系の人間が
楽しそうなイベントに招待されたときによく使う表現だ。
たとえば、誰かがあなたに『トロン:レガシー』を見に行くんだけど
一緒にどう? と聞いてきたら、「プラスワン!」と答えるのが正しい。

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