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本『本当は怖いソーシャルメディア』

『本当は怖いソーシャルメディア』
著 山田順
小学館101新書

タイトルは釣りみたいなもので、
サブタイトル『2015年「メディア融合時代」を考える』が本当のところ。

「フェイスブックがユーザー数をどんどん伸ばし、
フェイスブックフォンの発売まで計画して、ヴァーチャル共和国の
建設を目指す。グーグルがオープンなアンドロイドOSをつくり、
SNSに進出し、グーグルテレビをつくる。アマゾンが単なる書籍リーダー
ではない「Kindle Fire」というタブレット端末を発売する。
また、既存のプリントメディアの雄である新聞社が必死になって
自社サイトの課金化を図り、『ウォールストリート・ジャーナル』紙は
フェイスブック内にページを開く。
このようなことは、みな同じ一つの流れなのである。」

FacebookとAndroidとKindle、Hulu、グーグルテレビ、既存の新聞社、テレビ局、
メディア融合時代はみんなが同じ土俵でパイを奪いあっている。
まだ勝者は決まっていないけれど、結果として既存メディアはレベルを落とし、
SNSはそれに代わるものを生み出していない。

「ところが、現在のところ、ネットはこのプロフェッショナリズムと
モラルを崩壊させる方向に進んでいる。また、価値のある情報には
対価を払うという習慣さえ、読者から奪おうとしている。
「ニュースも情報も、エンターテインメントも、みんなタダで手に入る」
とユーザーに思わせたことで、ネットは大躍進をとげ、
ついにソーシャルメディアを生み出した。
しかし、ここでなにかが、確実に失われた。
プロフェッショナリズム、モラル、公益性……などがない世界を
想像してみてほしい。現在の既存メディアの経営はどんどん悪化している。
そのため、広告を取るのに血眼になっている。
これが進むと、ジャーナリズムは読者の方向を向かなくなり、
広告主や権力に媚びることになる。日本村のユーザーが泣いて喜ぶ事態、
マスコミが本当にマスゴミになる日がやってきてしまうだろう。」

全体の書き方が著者のいう「おっさんのタワゴト」みたいなところがあり、
話の本質がとらえにくいのだが、この危機感はもっておくべき。

フェイスブックの本質はフラタニティやソロリティなど、
大学の社交クラブであり(このへんは『facebook』がよく描いている)
「お友達になれるのは同じ階層に属する人たちだけ。
じつはリアル社会の階層化をネットに移し替えているだけ」
だということは、あまり大きな声で言われないけど、重要なポイント。

ジョブズが「常に愚かであれ」と言ったのは、
スタンフォードのエリート学生に向かってであり、
シリコンバレーはつねに高学歴のエリート層によって形成されている
というのも、今のネット社会を考える上で必要なこと。

私たちはもうソーシャルメディア上で本音なんか言えないんだ
ってのも共感。

◆読書メモ

いまや世界最強のSNSとなったフェイスブックを考えるとき、
どうしても避けて通れないのが、フェイスブックが誕生時に備えていた
排他性だ。もともと、フェイスブックは、ある特定の集団内の
コミュニケーションツールとして生まれたもので、誕生時に
この排他性があったから人気が出たのである。

じつはアメリカでは、ネット検索による未来予測は、
今後の成長市場だといわれている。すでにグーグルはCIAと組んで
レコーデッド・フューチャー(Recorded Future)という会社を設立しており、
ここでは「時間分析エンジン」を利用して、企業や個人の
未来の出来事や行動を予測している。

しかし、いまやSNS全盛時代になり、プライバシーなどありえない社会は
どんどん拡大している。つまり、オンライン生活をするなら、
人間というのはどこまでも正直で誠実に生きなければならなくなったのだ。
いまのネットではウソやおふざけなど許されないと、考えたほうがいい。
そこで、私はいつも思うのだが、人間というのは、
そんなに正直に誠実に生きられるものなのだろうか?

フェイスブックは「クローズド」をなんとか維持しながらも、
限りなく「オープン」にすることでこれまで発展してきた。
つまり、「実名+オープン」が今後のソーシャルネットワークの
中心になっていくと考えられる。
とすれば、それはまさに、私たちが暮らす現実社会と同じではないだろうか?

ただし、この現実社会には、プライバシーがある。
私たちは、他人に知られなくないことに関しては、
それを隠す権利を持っている。しかし、「実名+オープン」の
ソーシャルネットワークでは、やがてそれができなくなる可能性が強いのだ。
いくら、ユーザーがそれを望んでも、
SNS側が勝手に情報を解析して開示してしまう。

たとえば、フェイスブックにしても、ザッカーバーグCEOに続くNO.2で
財務を仕切るCOOのシェリル・サンドバーグさんの経歴を見れば、一目瞭然だ。
彼女の両親はソ連出身の豊かな移民であり、その両親の意向で
ハーバードに進学したサンドバーグさんは経済学を専攻し、
ローレンス・サマーズ教授に師事している。
卒業後は、世界銀行に入り、途上国えの国際融資を担当。
そうしながら、再びハーバードに戻り、ビジネススクールでMBAを取ると、
サマーズ教授が財務長官になったため、財務省入りして、
1997年のアジア通貨危機の対応に奔走している。
その後、彼女はグーグル入りして検索広告を担当した後、
フェイスブックに入ったのである。

スタンフォードの学生たちというのは、
世界から集まった超エリートたちである。
やがて、ウォール街に行く人間もいれば、ITビジネスに行く人間、
自らスタートアップ(起業)する人間、留学生なら国に帰って
外交官や政治家になる人間たちの集団である。
つまり、エリートのインテリ集団である。
誰も、おバカや落ちこぼれに向かって、
「常にお腹をすかしていろ、常にバカでいろ」なんて、
言うはずがないのだ。こうして、ウォール街と同じく
シリコンバレーは、いまも格差を助長されている。

SNSではこの行動データがどんどん増殖する。
これを取引するのが「アドエクスチェンジ」というものだ。
アドエクスチェンジでは、広告枠を株式取引のように行う。
アドエクスチェンジの代表的なのが、「RTB: Real Time Bidding」
と呼ばれるもので、クライアントと広告メディアをオンライン上で
瞬間的に結びつけ、広告を出稿させるのだという。
アメリカではこうした手法を「アドテクノロジー(Ad. Technology):広告技術」
と呼んでおり、SNSがウェブの主流になった2010年から、
ビジネスとして成立するようになった。

こんなことは誰も書かないので書いておくと、
アマゾンはオンライン通販で大人の玩具を売っている。
これは、アマゾンの通販のドル箱商品の一つで、
アマゾンは事実上、日本一の大人の玩具ストアである。

彼の言うとおり、アプリ書籍のランキングは、『~で何億稼ぐ』
『3秒で~できる』『デキる人は~』などの情報商材まがいのもの、『女ゴコロ~』
『スローセックス』などのエロ系コンテンツなどで埋めつくされていた。
エロ系でよく売れていたのは人気AV男優・加藤鷹のセックス指南本だった。

ここ数年で、日本村の新聞記者、雑誌記者の生活は激変した。
ソーシャルメディアなどなかった頃は、取材にも原稿にも時間が割けた。
しかし、いまや取材は短時間で切り上げ、ネットに速報を送り、
紙面原稿を書き、そのうえ記者ブログがあればそれを更新し、
さらにツイッターでつぶやく。しかも、サラリーは上がらず
ボーナスも減額。これでは、記者生活は地獄だ。

この調査(「Who Says What to Whom on Twitter」)によると、
エリートユーザー2万人が、世界中でアクセスされた全ツイートの
約50%を占めている。つまり、ツイッター内の全アテンションの
約50%が、2万人(ツイッター人工の0.05%以下)のエリートユーザーの
ツイートに集まっているのだ。

じつはメディアの本質は暴露にある。

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