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本『インクジェット時代がきた!』


『インクジェット時代がきた!
液晶テレビも骨も作れる脅威の技術』

著 山口修一、山路達也
光文社新書

インクジェット技術の仕組みと最先端の活用法を紹介。
インクジェットプリンターというと思い浮かぶのは写真印刷だが、
ケーキなどの食品や布地(デジタル捺染)、家の壁にまで印刷できる。
3Dプリンターなら、工業製品のプロトタイプ、立体地図、
精巧なフィギュアも印刷して作ることができる。
また、液晶テレビの配向膜やカラーフィルターにも
インクジェット技術が使われており、細胞の作成も研究されている。

インクジェットプリンターがどうやってインクを吐出しているのか、
基本的な仕組みさえ今まで知らなかった。
この本では、さらにインクジェット技術によって、1点物を安く作成でき、
リソース最適化されたものづくりを促進するとしている。
ここらへんは今後を見ないとわからないところだが、
インクジェットってプリンターだけじゃないよ、
ということがわかるだけでもおもしろい本。

◆読書メモ

 100度近辺で発生する沸騰は核沸騰現象と呼ばれ、鍋やヤカンの底あたりで
日常的に見られますが、バブル(泡)の発生が不安定ですので、
プリンターではより安定した膜沸騰状態が使われます。
 ノズル内のインクは100度で沸騰させるのではなく、300度程度まで加熱して、
膜沸騰という現象を利用して吐出させるのです。
マイクロ秒(1000分の1秒)単位という極めて短時間に加熱すると、
爆発的な沸騰になり、その蒸気圧は大気圧の100倍にも達します。
この強力な圧力でインクをと出するのです。

コンティニアス方式でのピエゾ素子は、定期的に振動して
インク流にくびれをつくるために使われました。
オンデマンド方式では、インクで満たされた液室をピエゾ素子によって
変形させ、それによって発生した圧力波でインクを吐出させます。
こういえば難しく感じますが、指でスポイトを押しつぶして液体を
出すのとまったく同じことです。これをピエゾ素子でやっているわけで、
原理は極めてシンプルです。

レーザープリンターと聞くと、文字をレーザーで印刷していくと
思われるかもしれませんが、実際には違います。
レーザープリンターの中には感光体ドラムという部品が入っており、
ここには高い電圧がかかっています。この感交体ドラムに、
レーザーを使って文字や画像の形を照射します。レーザーが当たった箇所は
電圧が低くなり、帯電させたトナー(カーボンの粉)を近づけると
ドラムにトナーがくっつきます。
紙にドラムを押し当てると、トナーが紙に転写されるというわけです。
あとは、ローラーで圧力と熱を加えてトナーを紙に定着させます。
レーザーといっても、ローラーを接触させる必要があるのです。

1994年、世界で初めての写真画質印刷をうたうプリンター『MJ-700V2C』が
エプソンから発売されました。720×720dpiという高解像度でありながら
10万円を切る価格で、大変な人気商品となります。
1996年には、このプリンターの技術をさらにブラッシュアップし、
6色インクによる印刷を実現した『PM-700C』が同じエプソンから発売されました。
6万円を切る価格、A4に写真を印刷するのも1分間に0.3枚と
当時としては高速で、圧倒的なヒット商品となりました。
一時期は日本国内プリンターシェアにおいて、
1機種で20パーセントを占めたほどです。

写真画質ではピエゾ陣営に後れをとったサーマル陣営のキヤノンも、
ノズルを微細化することで高精細な印刷を目指しました。
ピエゾ方式の場合、一つのノズルからサイズの異なる液滴を射出でき、
ドットのサイズの違いで諧調を表現する面積諧調を利用できます。
一つのノズルからは決まったサイズの液滴しか出せないサーマル方式が
写真の表現力で劣ったのはおもにこれが原因です。
ところが、サーマル方式は半導体製造技術を用いるため、
機械加工が必要なピエゾ方式より微細化しやすというメリットがあります。
そこでサーマル陣営は、サイズの異なる液滴を打ち分けるために、
細めのノズルと太めのノズルの両方をヘッドに搭載するようになりました。

サーマル方式もピエゾ方式も、ノズルからインクを押し出していたのですが、
静電吸引式はインクを引っ張り出しているのです。この方式のメリットは、
ノズルの口径よりもずっと細い液滴を吐出できることです。
インクジェットプリンターのインク滴の大きさを表現するのに
ピコリットルという単位を使いますが、静電吸引方式では
フェムリットル(1フェムリットル=1兆分の1ミリリットル)という
微細な液滴を飛ばせます。
また、グリセリンのように粘度の高い材料をインクとして使うことも可能です。

あるケーキ店では、小学生にケーキのデザインを考えてもらい、
それを元にしたケーキをつくって実際に販売しているそうです。

3Dプリンターによって、従来にはなかったタイプのビジネスも
次々と生まれるようになってきました。米国のFigurePrints社は、
オンラインゲームのアバターを立体化するサービスを提供しています。
同社が対象としているコンテンツは、「World of Warcraft」と「Xbox Live」。

インクジェットが(液晶の)どこに使われているのかといえば、
配向膜とカラーフィルターです。配向膜は従来フレキソ法(凸版印刷方式の一種)
というやり方でつくられていました。
配向膜の材料をローラーでガラス基板に薄く引き伸ばしていたのです。
これをインクジェットで直接打ち出すようにしたことで、配向膜材料の使用量も
少なくなり、製造時間も短縮することが可能になりました。

インクジェット技術を用いたそのほかの電子機器としては、
ハードディスクがあります。ハードディスク内ではデータを記録する
アルミやガラスの円盤が高速に回転していますが、
円盤がスムーズに回るためには適切な潤滑剤が必要です。
この潤滑剤を正確に差すためにインクジェット技術が使われているのです。

21世紀に入ってから、再生医療・組織工学の分野では、
工学的に組織や器官をつくろうという動きが盛り上がってきました。
その中で、特に3次元の組織や器官を人工的に構築することを目指した
アプローチは「バイオファブリケーション」と呼ばれるようになりました。

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