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本『買えない味』

『買えない味』
著 平松洋子
ちくま文庫

食べものや台所にまつわるエッセイ。
やや筆が飛びすぎで言い回しがうるさいところもあるが、
箸置きやテーブルクロスを使って食事をするとか、
鉄瓶でいれるお湯のおいしさとか、
飯櫃に移し変えた冷ごはんの意外な旨さとか、
ていねいに暮らすことの美しさにうっとりする。

◆読書メモ

暑い夏がやってくると、なぜだろう、遠い昔の匂いがまざまざと蘇る。
日向臭いトマトの匂い。プールの塩素の匂い。
オレンジ色の「ワタナベのジュースの素」の匂い。
水を撒いた夕暮れの庭土の匂い。時分どきの台所の匂い。
そして、本一冊一冊にくぐもる味と匂い。

江戸の頃、浴衣は毎夏新調するものであった。それは、
おろしたてのきっぱりとした張りを尊ぶ粋の気風であったろうか。
もちろんそうともいえるだろうけれど、実のところはこんな理由だってある。
夏場、浴衣を着たら、次は寝間着に下ろす。寝間着を着古したら、
今度は細く裂いて下駄の鼻緒に回す。大きく裂いたなら、雑巾である。
さて、雑巾もいよいよ役立たずになったら、燃やして灰に。
その灰を何に使うかといえば、染繊の媒染に役立てるのである。

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