« 本『ニートの歩き方』 | トップページ | 本『ゴルフ場殺人事件』 »

本『海賊のジレンマ』

『海賊のジレンマ
ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか』

著 マット・メイソン
フィルムアート社

パンク、海賊ラジオ、リミックス、MOD、グラフィティ、オープンソース、
ヒップホップなど、法の定まっていないグレーゾーンで発展してきた
若者文化についての話。

ここでいう“海賊”が何をさすのか、理解するまでにちょっとかかったのですが、
「デジタル情報の扱いをめぐって、私たちの社会に揺さぶりをかける人々」
という巻末解説の説明が適しているでしょう。
たとえば、音楽をサンプリングして、一部の音を強調したり、
再編集することで生まれる“リミックス”は著作権侵害か?
リミックスがパクりとして止めたりされなかったので、
その後のディスコやヒップホップが発展した。
ファッションの世界では服のデザインのコピーは自由に行なわれており、
一流デザイナーのデザインややがて一般に安く広まり、流行のサイクルが回る。
修道女が始めた子どもたちのための“パーティー・ルーム”は、
孤児院で育った青年により“ロフト”となり、
フラワー・パワー思想の“ディスコ”となった。

訳が悪いのか、原文からして読みにくいのかわかりませんが、
個々のエピソードはとてもおもしろいのに、
全体として“海賊のジレンマ”とは?というのがつかめなかったです。
(違法ダウンロードを取り締まるより、iTunesのように同じ土俵で
競争してしまったほうが社会は発展する、という話のようですが。)

原書が発売されたのが2008年と4年も前。
ネットの話をするのに、この時間は致命的で、
オーマイニュースの例とか今ではだいぶ事情が変わってます。

マドンナが最新曲のMP3ファイルと思わせて、
KaZaAで彼女自身の罵声をばらまいた話とか、
(おかげで彼女の評判は悪くなるわけですが)
『今夜はトークハード』の名前がちらっと出てきたりしたのが、
個人的にツボでした。

◆読書メモ

「ロックンロールでは、外見はいつだってとても重要だ。
外見で何かを伝えているんだ。それは多くの場合、伝統の拒絶だったり、
9時から5時まで働くような普通の生活の拒絶だったり、あらゆる種類の
コントロールの拒絶だったりするわけだ。しかし工夫次第で、何かを
伝えるために外見をもっとうまく使うことができる。ミュージシャンは、
インタビューを受けたり、アルバムのカバー写真を撮ったり、
ライブをやったり、四六時中いろんなことをしている。
そうしたすべての活動で、外見によって自分のメッセージを
行き渡らせることができる。」

「面白いこととは、同じところにとどまらないということさ」
「私にとっては一ヵ所にとどまるのは退屈だ。50過ぎた連中が
パンク風のレザージャケットを着てうろうろして、それがなんだっていうんだ。
大事なのは、分類不能のままでいるということだよ。そうすれば、
他人がきみを所有するということはない」

「これがコードの1つ。あと2つ覚えろ。そして自分のバンドを組め」

「きみや仲間たちだけのために音楽をやり始めたのなら、
他人のことなんか気にする必要はない。もし他の人々まで来るならば
それはすごいことだけど、来なくたって別にどうだっていいはずだ。
そうだろ? 雑誌をやるのも同じことだよ。
読者のために雑誌を出していたわけじゃないんだ。」

状況主義者が言うところの、芸術を日常生活と見分けがつかないものに
するという行為は、今では「ブランディング」として知られている。

音楽をダウンロードするのと同じくらいの割合で、子どもたちが自分の
エア・ジョーダン・スニーカーを「印刷」するようになったら、ナイキはどうなる?

シーランドのパスポート(多くは偽造だった)は、世界中の芳しからぬ
人々に所有された。たとえば、マイアミでジャンニ・ペルサーチを暗殺した
男の遺体から発見されたのは、シーランドのパスポートだったのである。

かたやエジソンは、蓄音機に続けて映画撮影の技術を発明すると、
彼の技術を使って映画をつくる人々にライセンス料を要求するようになった。
これが契機となって、ウィリアムという名前の男を含む映画制作の
海賊軍団が誕生したのである。彼らは、ニューヨークを離れて
当時はまだ未開の荒野であった西部へ逃れ、この地でエジソンの
特許が切れるまでライセンスなしで大いに成功を収める結果となった。
さらに彼らの海賊映画が時効で合法となっても、この海賊軍団は
自分たちが新しく発見し定着した西部の街、つまりハリウッドで、
なおも映画を制作し続けた。ちなみに、ウィリアムのラストネームは
なんだろう? ずばり、フォックス(FOX)にほかならない。

アメリカのラジオは1912年にタイタニック号が沈没するまでは厳しい
規制に縛られていなかったが、この事故以来初めて、遭難信号の
ために周波数を分離するとともに、24時間配送サービス、
ラジオ運営者への放送免許制度が導入されることになった。

たくさんの学者が、旧約聖書の話は、古代メソポタミアの文化の
中心地である現在のイラクに広まっていた異端の宗教の神話が
元になっていると考えている。だからこそ、ユダヤ教の聖典トーラや、
イスラム教の聖典コーランにも似たような神話が載っているのだ。

駆け出しの若いDJとして、ブロック・パーティーで近くの電柱から
電気を盗み、ラジカセでディスコ音楽やファンクをかけていた彼は、
曲の中でボーカルがなくドラムやベース音だけになる「ブレイク」を
待っている集団がいることに気がついた。このほんの15秒から
30秒のインターバルの間、ダンサーたちはフロアに躍り出て、
ドラムのリズムに合わせて身体をくねらせたり、ジェイムズ・ブラウンや
若い頃のマイケル・ジャクソンのように、音の変化に合わせて身体を
動かすことに熱狂していた。この動きが、後に「ブレイキング」と
呼ばれるようになった。

「僕たちが『スマーフェンシュタイン』をつくっていた80年代初頭には、
音楽をつくりたくなっても、楽器屋でギターの値段を見て回ってから、
あきらめて家に帰っただろう。でも、今はテクノロジーが進んだおかげで、
そうした思いつきも実現できる。昔はいろいろなことはプロとして
仕事にするしかなかったけど、現在では何かをプロとして仕事にすることは
選択肢のひとつに過ぎなくなった。この大きな違いによって、
間違いなく社会構造が変わってきている」

ココ・シャネルは、かつてこう言った。
「ストリートで流行しない服装は、ファッションとはいえません」

「パンクが反抗の音楽であるとしたら、
グラフィティは真に反抗のアートであった」

「文字は戦うための武器だ」。ヒップホップMCの草分けであり、
グラフィティ・アーティストでもあるRAMMELLZEEは私に語った。
「ニューヨークはこの星で最大のるつぼで、俺たちには“世界最凶”として
知られるギャラリーがある。つまり交通システム、この街に流れている
血液システムだ。俺たちは最初に血液システムを狙う。
俺たちはいわゆるガンなのさ」

グラフィティ文化を築いた映画『ワイルド・スタイル』や書籍『サブウェイ・アート』

マンキューソは、昔も今もとても細かい音にまでこだわるので、
ターンテーブルには1本あたり1万5000ドルもする「光悦(Koetsus)」の
針しか使わない。その針は、日本の武士の刀をつくっていた一族が
設計し代々手作りされている。

1972年に『ローリング・ストーン』誌は、幻覚を引き起こす麻薬
(サイケデリック・ドラッグ)とコンピュータには人々に「力」を与えるという
関連性があるという記事を書いた。この記事はゼロックス社のたいへんな
怒りを買い、その結果パロアルト研究所は閉鎖された。

現在では、MTVなどのメディア、文化そのもの、そして社会全体が
若者に迎合するようになっていて、若者が反抗する対象があまりにも
少ないように思います。だから若者たちは、テクノロジーを駆使して
抗議活動をしています。PCのマウスを操作して、離れたところから
影響を与える力は、親の世代の人たちはおそらく持っていません。
また、反抗精神は健康や年齢にも関係していて、人類の寿命が
長くなれば「怒りの時代」である「若者」でいる期間も長くなります。
子どもというものは、いつも怒っています。しかし、たいがいの場合、
自分が何に対して怒っているのかわかっていません」

ガンジーもこう言っている。「はじめは、人々はあなたを無視する。
そして、あなたを笑う。それから、あなたと戦い、最後にはあなたが勝つ」。


« 本『ニートの歩き方』 | トップページ | 本『ゴルフ場殺人事件』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/46627347

この記事へのトラックバック一覧です: 本『海賊のジレンマ』:

« 本『ニートの歩き方』 | トップページ | 本『ゴルフ場殺人事件』 »