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本『ニートの歩き方』

『ニートの歩き方』
著 pha
技術評論社

京大を卒業して、すごく暇な会社に就職したものの、
毎朝決った時間に起きて満員電車に乗って通勤して、
気が合わない人ともコミュニケーションするという生活に耐えられず、
ニートになった著者によるニートのススメ。

“働かざるもの食うべからず”っていう考えが
そもそも間違ってるんじゃないか。働くことに楽しみを感じる人は
それでいい。でも耐えられない人は無理して働くことなんかない。
生き方なんて人それぞれでいい。というのがこの本の論理。

働くことで得られるのは、たぶん、達成感だったり、
自分が社会に参加しているという意識だったり、
そしてもちろん生活していくためのお金。
著者は、こうした達成感や自己実現、社会とのつながりは
今ならネットで代替可能だという。
Twitterでゆるく人とのつながりを保つことができるし、
ブログで自分の意見を発信することもできるし、
うまくいけば小銭だって稼ぐことができる。
(「自分はうまくいっている例」とことわってはいるが、
著者はアフィリエイトなどで月8万円ほど稼いでいる。)
逆にいえば、ネットがなかったら、ニートとして生きていけなかったと。
これはすごく今風のおもしろい考え方だと思う。
働くことで得られるはずのものをネットが代替してくれる。

ニートといっても著者は引きこもりではなく、
シェアハウスで友だちとゲームしたり、近所の公園を散歩したり、
自炊したご飯をおいしいと感じたりして、毎日を楽しく過ごしいる。
そして、人生で本当に大切なのはそういう日常なんじゃないの?
と言われると、働くことのほうが不幸にさえ思えてくる。

「働かないこと」をやや正当化しすぎだなーとは思うのだけど、
会社に勤めるという働き方がすべてではないというのは、
ここ最近のノマドだったり、ベンチャーだったりにも通じる、
新しい生き方ではないかと思う。


◆読書メモ

じゃあなぜ、日本に生きる若者がこんなに生きづらさや
閉塞感を感じているんだろう。それは多分、日本の経済がまだ
成長している頃に作られたルールや価値観が生き残っていて、
それがみんなを縛っているせいなんじゃないかと思う。

都会で無料で時間を潰せる場所の代表格は
公園と図書館とブックオフだと思う。

一般的なレールから外れて生きることを目指すなら、
同じような境遇の仲間を見つけよう。自分が多数派の場合は、
特に深い疑問を持たずに一般的に当たり前だって決められたことを
守って目立たないようにしていれば基本的になんとかなったりするんだけど、
少数派に当たる人間はこの多数派だらけの世界の中で、死なないために
仲間を作って協力したり情報交換をしたりしていくことが必要になる。

「学校や会社にちゃんと行きなさい」
「みんなやっているんだからそれくらい普通にできるでしょ」
「普通の環境に適応できないのは努力が足りないから」
なんていう意見は、大して努力しなくても自然に社会に適応できる
多数派の人の傲慢な意見にすぎないので聞かなくていい。
人間にはいろんなタイプがいるのだ。
嫌な場所には行かなくていいし、嫌いな奴には会わなくていいし、
自分の居心地の良い場所に行って、自分のやりたいことだけ
していればいい。人生なんて本当はたったそれだけのシンプルなものだ。
悪い場所からはできるだけ早く逃げよう。

多分、人生で大切なことって保坂和志の小説のような何でもない日常の
時間で、大げさな夢や理想や波乱万丈なんて別に必要なくて、
天気の良い日に散歩したり猫と遊んだりゆっくりごはんを食べたりする
時間こそが美しくて大事なものなんじゃないかと思う。

「だるい」という感覚はもっと大事にされるべきものだ。
それは自分がやりたくないこと、自分が本当はやらなくていいことを
見分ける重要な感覚だ。何かを拒否するときに「それがなぜイヤなのか」
というのをはっきり言語化できなかったとしても、
「何だか分からないけどだるいんだ」って拒否してしまっていい。
直感を大事にしよう。

故・中島らもは「『教養』とは学歴のことではなく、『一人で時間を
潰せる技術』のことでもある」と言っていた。

あとまあ、頑張るとか能力があるとかそんなこと以前に、
頑張れなくても能力がなくても人間は生きていていいと思うんだよね。
人間ってそれくらい幅の広いものだし、そうでないとたくさんの
人間がいる意味がない。

真木悠介(見田宗介)『自我の起源』(岩波現代文庫)

『伽藍とバザール』

僕の好きな言葉に「怠惰はプログラマの美徳だ」というのがある。
正確には、Perlというプログラミング言語を開発したラリー・ウォール
というすごいギークが「プログラマの三大美徳は怠惰(laziness)、
短気(impatience)、傲慢(hubris)である」と言ったのだった。

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