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本『エンダーのゲーム』

『エンダーのゲーム』
著 オースン・スコット・カード
訳 野口幸夫
ハヤカワ文庫

ジュブナイルSFの傑作として名高い、らしいのですが、
個人的に興味をもったのは『ロボット兵士の戦争』に出てきたのと、
もうすぐ映画化するということだったので。

6歳の少年がリアルな戦争を戦うために、
徹底的にシミュレーション・ゲームの世界で成長していく物語。
彼が6歳で放り込まれたバトル・スクールで生きていくためには、
ゲームに勝利しなければいけない。せっかく得られた友情や、
彼を叩き潰そうとする嫉妬さえもすべて一種のゲーム。
彼がどうやって勝利していくかというもおもしろさではあるが、
むしろ、勝利するたびに彼が孤独になり、
不安に苦しめられる姿が一番の読みどころ。
エンダーの心象風景を反映するゲームの中で、
彼は何度も何度も死ぬ。

物語のゲーム化、ゲームの物語化は今ではめずらしくないが、
1985年の小説なので、初期の作品だったのだと思う。
バーチャルな戦いこそがエンダーにとって本当の世界。

訳が読みにくく、ゲームの描写が弱く、
理詰めで展開されるヴァレンタインとピーターの台詞などが
わかりにくい。映画化が絶賛進行中なので、
この機会に新訳版がでないかと期待。

◆読書メモ

彼はそのことの意義を、そのときには知らなかった。
のちには、しかし思い出すことだろう、地球を離れるよりも前に、
自分は最初に、地球が、他のどれとも同様のひとつの惑星であり、
べつだん自分の惑星ではない、と思ったのだ、と。

時には妙ちくりんなものもある。時にはエキサイティングなものが
あって、生きつづけていくには敏捷にならなくてはならなかった。
彼は何度も死んだけれど、それはOKだ、ゲームというのは
そんなもので、こつをつかむまでは何度も死ぬ。

「(略)こういったほかの隊は、ありゃあ敵じゃない。教官たちだよ、
彼らこそ敵なんだ。彼らはおれたちに、互いに戦い、
互いを憎むようにさせる。ゲームこそがすべてだ。
勝て勝て勝て。それを全部あつめても、なんにもならない。
おれたちは自分を殺す、互いをやっつけようとしながら
夢中になっていく、そしてその間ずっと、年寄のろくでなしどもは、
おれたちを見守り、おれたちを研究し、おれたちの弱点を発見し、
おれたちが充分によいかどうか判断しているのさ。
(略)彼らはおれがこの計画(プログラム)にふさわしいと
判断したが、誰も、一度も、おれに、プログラムがおれに
ふさわしいかと訊きはしなかった」

「ヒトラーが権力を得るに至ったのは、彼の軍隊のおかげだ、
彼が殺すことに意欲的だったからだ、と誰もが考えるし、
それは部分的には正しいよ、現実の世界では権力は常に
死と不名誉の脅威の上に築かれるんだから。けれど、
彼が権力を握ったのは、大部分、言葉でだ、
適切なときにおける適切な言葉でなんだ」

何が起ころうとも、いまもエンダーを愛している、ヴァレンタイン。
そして、思考の連鎖をたどっていくことが彼を導き、
連れ戻していった先は、地球(アース)だった。戻っていく先は、
樹木で覆われた丘陵群に、環のように取り巻かれた、澄んだ
水の中央での静寂な時間だった。あれが<大地(アース)>だ、
と彼は思った。周囲、幾千キロメートルもの、球体ではなくて、
輝く湖のある森だ、木々の中に高く、丘の頂きに隠されている家だ、
水辺から上へと至る、草の茂るスロープだ、水と空との境に棲む
虫たちを取ろうと、跳ねる魚たちと、猛襲してくる鳥たちだ。
大地は、蟋蟀や風や鳥の、絶えざる物音だ。そして、
自分の遠き離れた幼年期から語りかけてくる、一人の少女の声だ。

「人々は本当に行くでしょうか?」
「人々は常に行くよ。常に。彼らは常に、自分たちは旧世界でよりも
いい暮らしを築くことができるのだ、と信じるのだ」
「いやはや、もしかするとできるかもしれませんがね」


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