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本『Self-Reference ENGINE』

『Self-Reference ENGINE』
著 円城 塔
早川書房

『屍者の帝国』が読みたくて、その前に円城塔だよねと思って
読み始めてみた『Self-Reference ENGINE』。

 それから彼女には会っていない。もう死んでしまっているのだろうと思う。
 何といってもあれからもう、何百年かが経ってしまっているのだから。

冒頭のページにあるのがこの文章。

“イベント”が起こって、時間が過去から未来へと流れるのではなく、
過去も未来も無視して勝手な方向へ“時間構造”は流れている。
“巨大知性体”とよばれるネットーワークが
自然現象とか宇宙とかを管理している。
そういう世界(それもひとつじゃなくてパラドックスな世界)が舞台らしい。
ということはなんとなくわかるのだが、
あとはもう数理とSFが絡み合う言葉遊びのような世界で、
どのページをとってもビジュアル化不可能。

 僕たちは溺れているか、溺れかけているか、
 既に溺れてしまっているか、まだ溺れてなんていないのかの
 どれかの状態にある。無論、決して溺れないという可能性は存在する。
 しかし考えてもみて欲しい。魚だって溺れるのだ。

ストーリーを説明しろと言われると、さっぱりわからない。
じゃあ、つまらないのかというと、おもしろい。
下手な人が書くと、すごく自己満足的な気持ち悪い文章になると
思うのだが、この不思議な文章の波にのせられていたくなる。

SF小説には詳しくないので、個々のモチーフについては
よくわからないものも多いが、
自分が誰かに書かれたものであるという“被書空間”は
昔読んだ星野架名の『夢見たちのハーモニー』でも
使われていたなーと懐かしく思ったり。
(映画『主人公は僕だった』とかもそうですね。)

◆読書メモ

それから彼女には会っていない。もう死んでしまっているのだろうと思う。
何といってもあれからもう、何百年かが経ってしまっているのだから。

曰く、我々がいま住んでいるこの宇宙は、コナン・ドイルの
創作した宇宙と非常によく似た構造を持つ宇宙であり、
モリアーティ教授は無論ドイルの創作物にすぎないが、
彼が証明した定理は存在するようなそんな宇宙である。
そしてこのことは我々が誰かに書かれたものであるということを
強く示唆すると。この性質は被書空間として
SF界ではよく知られていると彼らは続けたが、
その頃には誰も聴いている者がいなかった。

例えば私はここに存在していないのだけれど、
自分があなたに見られていることを知っている。
あなたが私を見ていないということはありえない。
今こうして見ているのだから。
例えば私は存在していないのだけれど、
あなたに見られていることを知っている。
例えば私はいないのだけれど、見られていることを知っている。
存在などしていない私は、あなたの存在を、
とてもあたりまえであると同時に
なんだかとても奇妙な方法によって知っている。

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