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本『社会の抜け道』

『社会の抜け道』
著 古市憲寿、國分功一郎 構成 速水健朗
小学館

社会学者・古市さんと、哲学者・國分さんが、
IKEYAとコストコに行って、ショッピングモールについて語ったり、
原発デモや保育園や食や住民運動や反革命について語った対談集。

頭のいい人がカジュアルかつフランクに語っているので
とてもおもしろい。

國分 一緒に保育園を見に行って、「楽しいなぁ」とか「子どもいいなぁ」
とか思わなかった?
古市 確かにかわいいけど、だったら猫のほうがかわいくないですか?

といった古市くんコメントも笑える。
古市さんが『希望難民ご一行様』の著者だったって今さら気がついたり。
彼がこの若者的視点というか、新進気鋭の社会学者スタンスで
いつまで行けるのかわかりませんが、ここらへんの東チルドレンというか
(学者の序列はよく知らないので、勝手なこと言ってますが)
ネットが当たり前にあった世代の考え方とか物の見方はおもしろいな。

まえがきの
「こんな風に僕は、資本主義だとか、消費社会だとか、
インターネット網だとか、世界規模の何かに囲まれて毎日を生きている。」
というのは“今の気分”をよく表していると思う。

◆読書メモ

國分 つまり、IKEAは消費者の能力が試される仕組みになっていて、
楽しめる人にとっては、とても楽しめる場所なんだけど、リテラシーが
高くないと変なものを買わされてしまう場所でもある。

國分 これは近代の民主主義の基本的な欠陥であるわけだけど、
日本は特にその弊害が強くて、市役所が「こうします」っていったら
本当に何もできない。
(略)本当に恐ろしいほどに僕らは行政に対するアクセス権を持ってない。

國分 かつて福田和也さんが雑誌『文藝春秋』で、小泉純一郎は
なぜあんなに人気があるのかを分析していて、なるほどと思ったことがあるんだ。
その中では、現代社会は複雑過ぎて、人は自分の役を選びとることができない
という福田恆在さんの話と、人々がスポーツに熱狂するようになったのは
第一次大戦後だが、それは「人々が自分の人生を生きることができない、
断片化したためにその人生を仮託するようになったからだ」という
シュテファン・ツヴァイクの指摘が引かれていた。

國分 革命をどう考えるかということだと、俺は反革命の立場だな。
ドゥルーズもいっているんだ。革命が悪い方向にいくなんて当たり前だって。

國分 どうもロハスとかってイメージは苦手で、なんかみんな頑張って
「リラックスしよう!」と全力を尽くしている感じがする。

國分 消費社会が本当に選択肢を増やしているかは疑問だけど、
いずれにせよ、我々が選ぶことを強制されていることは確かだね。
そして選べることは必ずしも自由ではない。選ぶことを強制される
という側面があるわけだから。
古市 「自由」ってマジックワードですよね。選ばされてるだけかもしれないのに、
何もかも自分で選んだことにされる。やむにやまれず選んだものさえも、
「自由」に選んだということにされてしまう。

國分 これは、内田樹さんがすごく適切なことをいっていて、
「自分探し」とは要するに自分に対する周囲からの評価を変えたい
ということなのだ、と。よく「自分探し」で旅をしたりするでしょ。
自分の内部を探索するならどこでもできるのに何で場所を移動するかというと、
いまの場所での周囲からの自分に対する評価が不満だからだって。
古市 ということは、自分のことを探したいわけでは別にないんですよね。
自分をリセットしたいだけというか。

國分 古沢先生は、「お前らが自分で自分の思うように身体を動かせる
ようになることが、体育の授業の目的なんだよ」って教えてくれた。
俺は結構驚いたんだよね。自分の身体だから自分で自分の思うように
動かせるはずだって思い込んでるじゃない? でも違う。
訓練しなければ人は自分の身体を思うようには動かせない。
思った通りに動かせるようになるためには、自分の身体について、
自分の身体を貫く法則についてよく理解しなければならないんだ。
 これは頭、つまり知性もそう。自分でやりたいとか思っても
できないこともあるし、やりたいなんて思ったことがなくても、
それについて考えてみたら、上手に考えられることもある。
そういう条件っていうのかな、法則を発見して、うまく自分の持っている
条件を生かして生きていけるようになるっていうイメージかな。

國分 実はどんな問題でもそうなのかもしれない。こいつを倒してしまえば
あとは大丈夫だっていえる悪者なんて、現代の社会においてはどこを
探してもいない。問題はシステムなんだよね。

古市 僕たちがこの本を通してずっと話してきたのって、社会は革命的には
変わらないってことだと思うんです。何か新しいシステムを導入するとか、
新しい政治家が登場するとか、強大な敵を倒すとか、そんなことでは
社会は変えられない。社会はちょっとずつしか変わらない。


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コメント

こんにちは、はじめまして。僕も今日この本を読んでいました。とても面白い本で、いろんなことを考えました。前半ヨーロッパの話が沢山引かれますよね。ヨーロッパと、日本の違いってどういうことなんだろうか。ショッピングセンター的世界はなにが欠けているにもかかわらず、生活の中で中心を占め、人の思考までも変えてゆく気がします。革命がおこらないにせよ、ミクロの革命、頭の中の革命は毎日起こっている。あるいはアップルのアイフォンのように、ある日現れて、突然数年のうちに世界を変えるものもある。

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