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本『インド夜想曲』

『インド夜想曲』
著 アントニオ・タブッキ
訳 須賀敦子
白水uブックス

【私のハマった3冊】お湯が身体を温めるスピードで心を温めてくれる“風呂本”
紹介されていたので読んでみました(宣伝乙)。

失踪した友人を探してインドを旅する幻想的な物語。
旅行記のようでいて、それはどこにもないインド。

「人間一生のうちには、ホテル・スアリに泊まるということもありうる。
その時はそのことがさして幸運とは思えないだろうが、
思い出のなかでは(思い出というものはいつもそうだが)、
あの匂いや色彩や洗面台の下にいる昆虫など、
直接的な肉体感覚がある程度濾過されてみると、
なまの印象はうすまって、現実よりはましなイメージができあがる。
過ぎさった現実は、大体において、実際にそうだったよりも改善される。
記憶はおそるべき贋作者だ。その気がなくても、時間の汚染は避けられない。
こうして、いくつものホテルが僕たちの空想の世界を満たしている。
コンラッドやモームの本に出てくるホテル。
キップリングやプロムフィールドの小説からとったアメリカ映画のホテル。
僕たちは、まるでそこに行ったことがあるような気がしている。」

おそらく実名のホテルもたくさん出てくるし、
巻頭にはその名前は地名まで明記されているのに、
作者がはたしてインドを旅したことがあるのか疑うほど、
それぞれのホテルは夢の中に出てくるようにとらえどころがない。
旅の途中ですれ違う人々もどこか夢の中にでてくる人のよう。

それでも不思議な旅に連れてってくれるという意味で
これはまぎれもなく旅行記なのです。


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