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本『ここは退屈迎えに来て』

『ここは退屈迎えに来て』
著 山内 マリコ
幻冬舎

地方都市に暮らす女の子たちを描いた短編集。

私はよくも悪くも東京生まれの東京育ちなので、地方で暮らすことが実感としてよくわからない。
親が田舎暮らしをしているので、それが憧れだけで成り立つような生活でもないことはわかるが、
そこで成長したわけではないので、地元の友達みたいな感覚はやはりわからない。

登場する女の子たちの「ここではないどこか」、「自分ではない誰か」に漠然と憧れながら
(『アメリカ人とリセエンヌ』、『地方都市のタラ・リピンスキー』といったタイトルが象徴的)
地元のぬるさになんとなくつかりながら、自分探しとかしちゃうわけでもない感じがよい。

場所も時間軸も少しずつ違う彼女たちをつなぐのは“椎名一樹”。
地元で育ち、みんなの中心でありながら、そのまま地元の普通のお父さんになる椎名くん。
彼はこの“退屈”から連れ出してくれるかもしれない女の子たちの憧れなのだが、
やはり彼もどこにもいかない。

タイトルも表紙も素敵で印象に残っていた本。
すでに文庫化されてますが、単行本の表紙がやっぱりよい。


◆読書メモ

取材を終えた車は夕方のバイパスを走る。大河のようにどこまでもつづく幹線道路、
行列をなした車は時折りブレーキランプを一斉に赤く光らせ、道の両サイドには
ライトアップされたチェーン店の、巨大看板が延々と連なる。
ブックオフ、ハードオフ、モードオフ、TSUTAYAとワンセットになった書店、
東京靴流通センター、洋服の青山、紳士服はるやま、ユニクロ、しまむら、西松屋、
スタジオアリス、ゲオ、ダイソー、ニトリ、コメリ、コジマ、ココス、ガスト、
ビックボーイ、ドン・キホーテ、マクドナルド、スターバックス、マックスバリュ、
パチンコ屋、スーパー銭湯、アピタ、そしてイオンモール。

なんにもない退屈な町だな、と思っていると、不意に、自転車にまたがって
踏切待ちをしている、制服姿の少女の姿が目に飛び込んできて、
はっと胸を衝かれた。
あれは、わたしではないか?
朝子はなんだか、自分はいまもここにいるような気がする。そしてはっきりと悟る。
わたしは自分の一部を、ここに置いてきたのだ。自分の一部は今もこの町にいて、
やっぱりどこにも行っていないのだ。

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