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本『月をマーケティングする』

『月をマーケティングする』
著 デイヴィッド・ミーアマン・スコット、 リチャード・ジュレック
日経BP社

1969年7月20日、アポロ11号は月に着陸した。
これに前後するアポロ計画を「史上最大にして最も重要なマーケティング・PR活動の事例」
としてとらえ、NASAの広報活動、映画、小説の影響、
雑誌、テレビの果たした役割、NASAの提携企業の活動を丹念に追っている。

最初はこのタイトルを「人類を月に送り込む」という壮大な計画を
NASAがどのように政治家や国民にPRしたか、という風に受け止めていたのだけど、
後半になって、アポロ計画そのものが冷戦時代にアメリカという国を
宣伝するための壮大なPR活動だったのだとわかった。

「つまりアポロ計画は、国家の命運がかかった広報プロジェクトという
要素が大きかった。だからこそ、アポロ計画のこうした存在意義を理解していた
人にとっては、アメリカ人が月面に最初の足跡を残したあとに、
もう一度月に行く理由が見出せなかったのである。」

世界中が見守ったテレビ中継が当初はプロジェクトの妨げになると
NASA内部でも反対派が多かったこと、
(宇宙で撮影できるテレビカメラをもっていくだけでも重量、技術的な問題がある)
アポロ11号の盛り上がりとともに、人々の関心が急速に冷めていったこと
なども興味深い。

宇宙から地球を撮影した有名な1枚も当初は撮影計画になく、
乗組員が美しい地球の姿にあわててシャッターを切った様子が紹介されている。
そして、地球の写真を公開するように運動したのが、かのスチュアート・ブランド
であり(彼はのちに『ホール・アース・カタログ』の表紙にこの写真を使う)
その写真こそが遠くの月よりも自分たちが暮らす地球の問題へと
人々の目を向けさせたという皮肉な状況も伝えている。

「公開された「地球の出」の写真に世界が強い感銘を受けた時期に、
こうした一連の出来事が起こったのである。その結果、人間は今こそ
自分たちの星におこなっていることに目を向けるべきときなのに、
なぜ生命もいない寒々とした不毛な月の調査に莫大な労力と費用を
注いでいるのか、と疑問がもたれはじめた。」

◆読書メモ

元記者のボニーは、NASAの広報担当者は宣伝マンでなく記者であるべきだという考えのものとに、
新聞・雑誌や放送局で働いた経験のある人材を積極的に採用した。
「みんな文章を書くのが得意でしたし、ニュース媒体がとういうものかもわかっていました。
これは広報活動をするうえで非常に有利でした」

NASAのテレビ中継賛成派は、自らの思いをさりげなく大衆にアピールするため、
この人気画家の力を借りることにした。1966年、NASAはロックウェルに、
人類が初めて月に降り立つときの様子を絵にしてほしいと依頼した。
そこでロックウェルは、NASAの有人宇宙飛行センターを訪れ、月着陸船の実物大の模型を見て
写真に撮り、月面で着る最新の宇宙服に身を包んだ宇宙飛行士にポーズを取らせた。

リールIIIが制作した映像には、ロケットが宇宙でエンジンを噴射する様子や、
月に向かって下降する様子や、炎のかたまりとなって再突入する様子などが描かれていた。
リールIIIには社員が3人しかおらず、これらの映像を制作するため、シュピーズは
ボーイングの技術イラストレーターだったラルフ・マッカリーに協力してもらった。
7年後、マッカリーは映画監督のジョージ・ルーカスに請われて、
ルーカスの最新プロジェクトであるSF冒険映画3部作の構想を練ることになる。
映画『スター・ウォーズ』のイメージが固まったのは、マッカリーが描いた
プリ・プロダクション用のイラストのおかげだった。
現在マッカリーは、ダース・ベイダーやチューバッカ、R2-D2、C3PO、
『スター・ウォーズ』のセットをデザインした人物として広く知られている。

「1枚の写真があれば―宇宙から見た地球のカラー写真が1枚あればいい。
それがあれば、すべての人が、さまよう小さな地球の完全な姿を見られる。
それを見たら、物事をこれまでのようには考えられなくなるだろう」。
翌日、ブランドは、「なぜ我々は地球が全部写った写真をまだ見ていないのか?」
と書かれたバッジやポスターを何百も発注した。
そして、白いジャンプスーツと靴と、シルクハットと蛍光色のサンドイッチボードを
身につけ、カリフォルニア大学バークレー校の校門の前でバッジを売りはじめた。

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