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本『マインドフル・ワーク』

『マインドフル・ワーク
「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える』
著 デイヴィッド・ゲレス
訳 岩下慶一
NHK出版

最近流行りの“マインドフル”について、
グーグルやfacebookなど企業での活用事例、
仏教など宗教を源泉とする歴史、
瞑想が脳にどんな影響を与えるか最新の瞑想神経科学による研究などを解説。

“マインドフルネス”とは「完全に現在に存在すること」、
「特定のやり方で、意図的に、この瞬間に何ら判断を加えることなく注意を向けること」
などと定義されている。
もともとは仏教でいうところの“念”にあたり、英語で“マインドフル”と訳され、
それがさらに日本語で“気づき”と翻訳されるので、意味がわかりにくい。
具体的には瞑想によって呼吸に意識を集中するトレーニングをつむことで、
ストレス軽減、集中力、他者への思いやりが深まるなどの効果が上げられている。

スティーブ・ジョブズの例をあげるまでもなく、
ヒッピー文化を通して、禅へ関心をよせるアメリカ人は多い。
近年(2010年ごろ)になって、それがマインドフルとして、シリコンバレーを中心に
企業にとりいれる動きが流行りだした。
主には企業幹部がトレーニングを受けたり、社内に瞑想ルームを設けて
従業員がマインドフルを受講できるようにしたりする企業が増えているという。
本書では、そこらへんの企業の取り組みを具体的に取材している。

著者は若いときにインドで瞑想を学んだことがある一方で、
『ファイナンシャルタイムズ』や『ニューヨークタイムズ』で経済を追いかけている。
マインドフルが万能であるという礼賛にならず、
ビジネスでの活用、脳科学の研究を客観的に紹介している。

また、“マクマインドフルネス”とよばれる批判も紹介している。
マインドネスは宗教から切り離されることで、一般にも広く受け入れられたが、
本来の意味を失った瞑想を批判する声も多い。
流行として商業的に消費されることに「オーガニック」の二の舞では
とも懸念されている。

マインドネスが流行るということは、それだけ現在は集中できない環境であり、
ストレスフルだということだ。

私はちゃんとしたトレーニングを受けたことがないけど、
「今、自分がしていることに集中する」と意識してみると、
いかに「今に集中していないか」に気がつく。
たとえば、仕事中でも他の作業のことを考えていたり、
歩いているときでも別の考えにとらわれて、新しいお店ができたことにさえ
気がつかないといったことはよくある。

ネットとかスマホとか、集中できない環境を作り出したシリコンバレー企業が
こぞってマインドフルネスによる精神の静寂を求めるというのは
ちょっと皮肉な感じもする。

◆読書メモ

ある意味で、神経可塑性の研究は古くから知られている事実を裏づけたに過ぎない。
「常日頃考え、思案していることは何であれ、心の傾向となる」。

私たちはテクノロジーに没入しながらも現在の瞬間と同時につながっていられると
信じ込んでいる。でもそんなことは無理だ。マルチタスクは幻想に過ぎない。
人間は二つのことを同時にはできないのだ。
私たちがマルチタスクだと思っているものは、いくつかの活動を
素早く切り替えているに過ぎない。「多くの人々が現実に圧倒されるのは、
現在にとどまることができないためだ。それなのにみな、マルチタスクをすれば
仕事が速くできると信じてやまない」。

「痛みは避けようがない。だが苦しみは自分次第で避けられる」


◆関連書籍

『森の生活』 ウォールデン

『オン・ザ・ロード』

『レスポンシブル・カンパニー』

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