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本『素粒子』

素粒子 (ちくま文庫)
ミシェル ウエルベック
筑摩書房 ( 2006-01 )
ISBN: 9784480421777


『素粒子』

著 ミシェル・ウェルベック
訳 野崎歓
ちくま文庫

今年最初の1冊。
というか今年最初に読了した本。
約400ページあって、最初の100ページは1日で読めたのですが、
主人公たちが中年になってグダグダしている200ページくらいはなかなか進まず、
後半は年末年始ということもあって一気に読みましたが、ここが結構、重かった。

どういう話なのか説明するのはとても難しいのですが、
本文の文章がうまくあてはまる気がしたので、引用しておきます。

「同じころ、カフカの小説を読み始めた。
最初は寒々しさ、冷気が忍び寄るような感じを覚えた。
『審判』を読み終えたときは、痺れたような、ぐったりした感覚が数時間も続いた。
たちまちのうちに彼は、このスローモーションの世界、恥辱にまみれ、
人と人が途轍もない空虚の中ですれ違い、
互いのあいだにいかなる関係も結び得るとは思えない世界が、
まさしく自分の精神世界そのものであることに気がついた。
それは緩慢で、冷え冷えとした世界だった。
ただし一つだけ熱いものが、女たちの脚のあいだにあった。
だがそれは彼には手の届かないものだった。」
(85ページ)

「イギリス人は冷静沈着で、人生の出来事を――たとえどれほど悲劇的な
ことであれ――ユーモアとともに受け止めるやり方を心得ているとよく言われます。
かなり当たっています。それがイギリス人の本当に馬鹿なところなんです。
ユーモアは救いにならない。
結局のところユーモアなどほとんど何の役にも立たないものなんです。
何年間か、あるいはもっと長いあいだ人生上の出来事をユーモアとともに受け止め、
場合によってはほとんど最後までユーモアに富んだ態度を貫くこともできるでしょう。
とはいえ最後には、人生は人の心を打ち砕かずにはいない。
一生を通してどんな勇気や冷静さやユーモアを養ってきたとしても、
必ず最後には心を打ち砕かれる。そうなればもう笑うこともなくなります。
要するにあとに残るのは孤独、寒さ、沈黙のみ。
要するにあとは死ぬしかない。」
(396ページ)

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