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本『海からの贈物』

海からの贈物 (新潮文庫)

『海からの贈物』
アン・モロウ・リンドバーグ
新潮文庫

須賀敦子『遠い朝の本たち』で取り上げられていた1冊。
飛行家リンドバーグの妻であり、自身も飛行士であり、
6人の子供の母であるアンが休暇で訪れた離島で綴った書。
エッセイというより深い思索に満ちている。

吉田健一訳について、『遠い朝の本たち』の解説末盛千枝子は
「男性文学者の手になるのが残念」と書いているが、アンの思想は
フェミニストというより男前なのでこの固い文体があっている気がする。
(「女性的でわかりやすい」と評される落合恵子訳は
意図的な意訳が多すぎる説もあり。現在、絶版。)

リンドバーグといえば1932年に有名な誘拐事件で長男をなくしている。
この本が書かれたのは1955年。
1957年頃から夫リンドバーグは長年にわたる愛人との交際を始めている。
夫婦が向きあうことについて書かれた部分なんかもそう思って読むとなかなか意味深である。

<読書メモ>

なぜなら、我々を他の人間から切り離すのは
地理的な意味での孤独ではなくて、精神的な孤独だからである。
我々を我々が愛している人たちから遠ざけるのは無人島や、砂漠ではない。
それは我々の頭の中に拡がる砂漠、または心の中の荒地であって、
そこを我々は行く所もなくてさ迷っている。

しかし女にとっては、自分というものの本質を再び見出すために
一人になる必要があるので、その時に見出した自分というものが、
女のいろいろな複雑な人間的な関係の、なくてはならない中心になるのである。

我々はそれがいつまでもあるものではないという理由から一足飛びに、
それが幻影であるなどと思ってはならない。

蜉蝣の一日や、天蚕蛾の一夜は、
その一生のうちで極めて短い間しか続かない状態だからと言って、
決して無意味ではないのである。
意味があるかないかということは、時間とか持続とかと関係はなくて、
他の基準に従って判断されなければならない。
それは或る時の、或る場所での現在の瞬間に属していることで、
『現在あるものは、或る時の、或る場所での現在にしかない』のである。

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