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本『ハックルベリー・フィンの冒険』

ハックルベリー・フィンの冒険(上) (岩波少年文庫) ハックルベリー・フィンの冒険(下) (岩波少年文庫)

『ハックルベリー・フィンの冒険』
マーク・トウェイン
岩波少年文庫

知名度的には『トム・ソーヤの冒険』の方が有名だが、
アメリカ文学史的に評価が高いのは断然『ハックルベリー・フィンの冒険』。

男の子らしい冒険に満ちた『トム・ソーヤ』に対し、
アルコール依存症で子供に暴力をふるう父親から逃げ出し、
逃亡奴隷ジムとともに旅するハック。
インジャン・ジョーがどこか哀れみを誘う悪党だったのに対し、
ハックが出会う王様と公爵はどうしようもない詐欺師だし、
復讐にしばられてお互い殺しあっている一族とか、もっとずっとシビアだ。


某カフェを「ハックルベリーみたいな気分になれる場所」
と紹介していたサイトがあったけど、実際に読んだことないんだろうなと。


ハックにとって逃亡奴隷を助けるのは「悪いこと」なのだが、
それでもジムを助けることを選ぶ場面がすばらしい。


岩波少年文庫に収録されるのは意外にも今回が初。
人種差別的言葉が使われていることと無関係ではないと思う。
(アメリカでは実際に発禁になっていた時期や図書館もあるという。
本書では訳者の強い意図により使用されていない。
方言による口語体という特徴もあえて省略されている。)



「そうだな。考えてみれば、いまだってりっぱに金持ちだよ。
おれはおれ自身のものだし、おまけに八百ドルの値がついてるんだからな。
八百ドルの金があったら、もうそれ以上はいらないよ」


それから十五分ほどして、ぼくはようやく立ち上がり、ジムにあやまりにいった。
黒人奴隷に頭を下げるなんて、という人もいるかもしれないけれど、
そのあと、あんなことをしなければよかったなんて思ったことは一度もない。


筏の上の暮らしって、ほんとうに気分がいい。見上げれば空があって星がまたたいている。
ぼくたちは筏の上に寝そべって、星はだれかが作ったものなのか、
はじめっからそこにあるものなのか議論する。


ジムが家族を思う気持ちは、白人たちとなんにもちがわないとぼくは信じている。
そんなことはないという人もいるだろうけど、ぼくはそう信じてる。


人間っていうのは、ついついくだらないばかげたことをするもので、
やっておきながらその責任はとりたくないっていうような代物だ。
そして、やったことをかくしておけるあいだは、恥ずかしいなんて思わないんだ。


正しいことをしようと、悪いことをしようと、結局はおなじなんだ。
人間の良心には理屈なんてものはなくて、どっちにしてもうるさく責め立ててくる。

 

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