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本『神さまってなに?』

神さまってなに? (河出文庫)

『神さまってなに?』
森達也
河出文庫

日本人にとっての宗教とは?というのがここ数年のテーマです。
私自身は特定の宗教を信仰していないけど、
八百万とか仏教の考え方は日本人の暮らしに溶け込んでいるためか、
比較的すんなり受け入れられる気がします。


本書では世界の三大宗教、仏教、キリスト教、イスラム教の
成り立ち、教え、歴史を中心に、なぜ人は宗教を求めるのか、
宗教と政治が結びついたときの危険性をわかりやすく解説してくれます。


神道が日本独自の民族宗教であること、キリストがユダヤ人であること、
意外にこんなことすら知らなかったのだと。

以下、引用が長すぎるのですが宗教とは何かを考える上での基本にしたいと思います。

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本『銃・病原菌・鉄』

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

『銃・病原菌・鉄』
ジャレド・ダイアモンド
草思社文庫

単行本が話題になったころ(日本版は2000年発売)から気になっていたのですが、
ずっと手がつけられず。
単行本の上巻をもっていたのに見つけられず、結局、文庫を借りるという。


なぜ世界は、富と権力がかくも不均衡なのか。

動植物に恵まれていたユーラシア大陸は、東西に長い大陸だったことで
動物の家畜化や植物栽培の技術がスムーズに伝播した。

逆に動植物に恵まれていなかったアメリカ大陸、アフリカ大陸は南北に長い大陸だったため、
気候の違いなどが障壁となり食料生産の発達が遅れ、狩猟採集時代が続いた。

結果として、兵士をようする政治力、宗教、武器を作る技術、
家畜の病原菌に対する抵抗力などにおいて、
優位に立つことができたヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化した。


つまりヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できたのは、
人種的な差異があったからではなく、地理的偶然と生態的偶然のたまものにすぎない。


ざっとまとめるとそういう内容なのだが、
高校の時点で世界史を放棄してしまった私にも大きな歴史の流れを理解できた。


考古学のみならず、植物の分布、言語学などから
歴史の流れを読み解いていくところがおもしろい。


日本はたまたまユーラシア大陸の端っこの島国だったことで、
中国経由で文化、技術、農業を取り入れつつ、
すぐには他国に侵入されずに独自に進化することのできたラッキーな国だったのだとわかる。

 

 

本『誠実な詐欺師』

誠実な詐欺師 (ちくま文庫)

『誠実な詐欺師』
トーベ・ヤンソン
ちくま文庫

トーベ・ヤンソンの1982年の作品。
ムーミンシリーズに見え隠れする影の部分だけで描かれたような、
雪とグレーの空で覆われた物語。


どういう話か説明しにくいけれど、訳者冨原眞弓の解説が的確。
「誠実であろうとするがゆえに愛想や追従がいえず人づきあいの悪いカトリ・クリングと、
金と地位に恵まれて温和なお人好しでいられるアンナ・アエメリン。
このふたりの女性の親和と確執を軸に、支配と諦念と自由のテーマが語られていく。」


明るい話ではないが、重苦しいわけでもなく、静かに進行していく感じがとても好みです。

「礼儀正しさはときに欺瞞だったりする、そうでしょう? わかっていただける?」

本『長い冬』

長い冬―ローラ物語〈1〉 (岩波少年文庫)

『長い冬』
ローラ・インガルス・ワイルダー
岩波少年文庫

岩波少年文庫を再読しようと思ったのは、
『murren(ミューレン)』で紹介されていた『長い冬』がおもしろそうだったから。

福音館のインガルス一家の物語5冊は夏前には読み終わったのだけど、
冬になるまで待っていました。


しかし、零下40度、外に出れば遭難しかねない猛吹雪が7ヵ月と、予想以上の厳しい冬でした。
車軸油で明かりを作ったり、干し草をよって燃料にしたり、
暗唱や歌で寒さと暗闇を乗り越えようとするインガルス一家の姿には、
ちょっとの寒さでブーブー言ってる自分が申し訳なくなります。


汽車が止まって燃料と食料がなくなってしまった町を救うため、
命がけで小麦を探しに行くのが未来の夫アルマンゾというのはいささか出来過ぎな話で、
ワイルダー兄弟はパンケーキ食ってるからいいよなとか、
自分の種小麦は守るけど他人には売らせるのかとか、
移民車の食料取ってしまったら移民はどうなるんだとか考えると、
実際にはもっと揉め事もあったんだろうなと思いますが。


ストーブで暖めたアイロンをキルトでくるんでベットに入れる場面があり、
温石的なものってどこでも活用されたんですね。


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本『飛ぶ教室』

飛ぶ教室 (岩波少年文庫)

『飛ぶ教室』
エーリヒ・ケストナー
岩波少年文庫

じつは読んだことがなかったケストナー。
こういう児童文学はやっぱり子供のときに読んでおくべきでしたね!
クリスマスの話なので12月になるのを待って読みました。

あこがれの寄宿舎生活!
彼らの合言葉「あったりまえ!」がうらやましい。
「ギムナジウム」ってだけでときめいてしまうのは
『トーマの心臓』や『11月のギムナジウム』の幻想だと思う。


実際には辛いことももちろんあるはずで、
ケストナーは子供時代は楽しくて幸せなことばかりじゃなくて
悲しいことやみじめなこともあるんだとまえがきで訴えつつ、
楽しい学園生活を描き、少年時代を忘れるなと禁煙さんに言わせている。
辛い人生を救うのは幸せな記憶なのだ。


優等生のマルティンやまっすぐなマティアスよりも
自分の非を認められるゼバスティアーンやかっこつけテーオドールに惹かれます。


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本『忘れられた巨人』

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

『忘れられた巨人』
カズオ・イシグロ
ハヤカワepi文庫

何か大切なものを忘れてしまっている人々という冒頭から
喪失感いっぱいでワクワクしました。


『わたしを離さないで』がSF設定であってもSFではないように、
『忘れられた巨人』も騎士や竜がでてくるからといってファンタジーではなく、
むしろ描いているのは現代のメタファーでは。


「アーサー王伝説を知らないからよくわからなかった」という感想をいくつか見ましたが、
ガウェイン卿やマリーンといった名詞が使われてるだけで、こちらもほとんど関係ないと思います。


たしかに構成や展開がややわかりにくいのですが、
老夫婦とともに霧の中を歩くような気持ちで読みました。


人は大切な記憶を失って生きていけるのか、あるいは逆に、
重い記憶を抱えたままでは生きていけないのではないか。

 

本『園芸家の一年』

園芸家の一年 (平凡社ライブラリー)

『園芸家の一年』
カレル・チャペック
平凡社

『ボタニカル・ライフ』がベランダーのバイブルだとしたら、こちらは園芸家のバイブル。
ベランダーが植物に捧げる愛とユーモアはこの本から受け継がれたものだとよくわかります。
いとうせいこうによる巻末解説もすばらしい。


カレル・チャペックには立派な庭があるけれど、冬の間に注文した苗が
届いてみたらどこにも植えるスペースがなくて庭を右往左往するあたり、
ベランダーの共感を呼ぶ。


急いで読むのがもったいなく一日一章づつ読んでいきましたが、
手元において1月には「園芸家の一月」の章、
7月には七月の章というふうに季節ごとに読み返したい一冊。


カレル・チャペックは冬の庭仕事がもとで肺炎になり亡くなっている。
素敵なイラストは兄ヨゼフ・チャペック。彼は収容所で死亡。
彼らの生家近くにはジョウロを持ったカレルと、スケッチブックを持ったヨゼフの像が立っている。

 

本『年収90万円で東京ハッピーライフ』

年収90万円でハッピーライフ (ちくま文庫)

『年収90万円で東京ハッピーライフ』
大原扁理
ちくま文庫

『20代で隠居 週休5日の快適生活』の大原扁理2冊め。
タイトルだけみると節約術みたいだけど、
何が幸せかは人によって違うから自分で決めようというお話。

著者は週休5日の隠居生活だけど、誰にでもそれを勧めているわけではなく、
仕事が大好きで仕方ない人は働けばいいという考え。
でも進学とか就職とか絶対にしなければいけないわけじゃなくて、こういう生き方もあるよと。


生活水準を下げていって、必要最低限のお金から週何日働けばいいか逆算する、
という方法は実践的。


「コンビニ弁当ばかり買っていく人っていつみても元気がないし、覇気がない。
たまに殺気は漂っていた」という話は自分にも覚えがあるなー。

コンビニ弁当自体が悪いんじゃなくてコンビニ弁当でいいやっていう食生活。
たぶん何食べてもあまり記憶に残らない。

それにくらべると今は食事がおいしいと単純に幸せだと思う。

前著よりも著者のいじめ体験などが書かれているので、
学校や職場でうまくやっていけないと感じている若者に勧めたい。
世間でいう「普通」を疑ってみたほうが幸せになれる人もいるんです。


「たとえば電車で目の前に杖をついた老人とか妊婦さんがいても席を譲らないのに、
将来自分が困ったときのために必死に働くのって、関係ないようで地続きな気がする。」

 

本『島暮らしの記録』

島暮らしの記録

『島暮らしの記録』
トーベ・ヤンソン
筑摩書房

トーベ・ヤンソンはたしか無人島に住んでいたなと思って読んでみました。

島といってもクルーヴ島は岩礁?くらいの小さな土地。
パートナーのトゥーリッキ(おしゃまさんことトゥーティッキのモデル)と
トーベの母ハムも一緒なので孤独な一人暮らしというわけではないが、
隣の大きな島からボートでないと渡れない(海が荒れると移動できない)とか、
写真でみるかぎり、風光明媚な島というよりは水平線と岩しかない風景で、
それなりにハードな暮らしだったんではと思う。

トーベはこの島で1965年から1991年まで、51歳から77歳までの夏を過ごし、
魚の漁がつらくなってきたところで島を去っている。


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ランニング記録

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