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本『楽園のカンヴァス』

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

『楽園のカンヴァス』
原田マハ
新潮文庫

原田マハ2冊め。

アンリ・ルソーの謎の作品をめぐる物語。
著者のキュレーターとしての経歴から知的な美術ミステリーを期待したんですが、
なにより美術作品を語る言葉が美しくもなく知的でもなくがっかり。


大原美術館の監視員、MoMAのキュレーター、
バーゼルの大富豪が所有する美術コレクションなどなど、
風呂敷の広げ方がテレビドラマの劇場版的な感じで、
ストーリーの展開も派手な設定も安っぽく感じました。


最初の方に登場する新聞社の文化事業部部長のキャラクターに、
美術展をめぐる金銭と権威が感じられて、むしろここだけリアリティがありました。


2001年開催のMoMA展に実際に来たのは『眠るジプシー女』で『夢』ではなかったな〜。

本『重力ピエロ』

重力ピエロ (新潮文庫)

『重力ピエロ』
伊坂幸太郎
新潮文庫

初伊坂幸太郎。
伊坂ファンに「最初に読むなら何がよいか」と聞いたら、
「無難に『重力ピエロ』あたりでどうでしょう」とのことで『重力ピエロ』。


いや、おもしろかった!
なにより兄弟、そして父親と交わす会話がいい。知性とユーモアとテンポの良さ。
冗談めかした会話から家族の強い絆が伝わってくる。

「俺の息子たちには、この病室に花を置く発想がなかったからな」
「そういう繊細さを、親から教えてもらえなかったんだ」
「親の顔が見たいな」

伊坂ファンが「映画版のキャスティングで読んでしまう」というように、
岡田将生くんの繊細な顔は春のイメージにぴったり。

お兄さんの加瀬亮は私のイメージより繊細すぎるけれど、
お母さんが鈴木京香なのも納得。競馬シーンは彼女のイメージで読みました。

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本『スタイルズ荘の怪事件』

スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

『スタイルズ荘の怪事件』
アガサ・クリスティー
矢沢聖子 訳
ハヤカワ文庫

アガサ・クリスティー読破は何度かめざしてるんですか何度も挫折中。

装丁は昔のもののほうが断然好きなんですけれど、
今回はクリスティー文庫の新訳にしてみました。


新訳だとポアロの鼻持ちならない感じが薄れてかわいいおじさまという印象。
たんにこのキャラクターに慣れたせいかもしれませんが。


何度も挫折してるのでポアロ第1作の『スタイルズ荘』は何度か読んでるはずなんですが、
やっぱり何度読んでもおもしろい。文体、プロットの安定感たるや。


アガサ・クリスティー作品において「フーダニット」はたいして重要ではないので
犯人も覚えてないので繰り返し読むのに支障はないです。


クリスティーの孫マシュー・プリチャードが序文に書いているように
事件をとおしてあきらかになる人間模様にどきどきします。


「しかも、登場人物はきわめてリアルです。
愛、嫉妬、羨望、貪欲、さまざまな人間関係は、現代に置き換えても通用するでしょう。
そして、いったんポアロが事件を解決し、犯人を突き止め、
そして、おそらくこれがなにより重要なのでしょうが、
それまで隠然とただよっていた不安や敵意が暴かれると、
人びとの生活はまたふだんどおりになるのです。」


 

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本『本日は、お日柄もよく』

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

『本日は、お日柄もよく』
原田マハ
徳間文庫

初原田マハ。
タイトルを逆手に取った葬式の話だと勝手に思っていたら
普通に結婚式から始まりました。


友人の結婚式のスピーチをするところまではおもしろかったのですが、
政治展開になると2008年当時の小泉政権やオバマ大統領の選挙戦がモデルになっているので、
あ〜そんな時代もあったね〜という気分に。


時事ネタをエンターテイメントにしすぎで、
その後の展開を知ってて読むと選挙演説が心に響かないんだよね。


結婚式のスピーチも選挙演説も結局は実感がこもってないと
聞く人の心は動かせないよということかと。


スピーチを頼まれてる人はわかりやすくて
感動的なスピーチの作り方として参考になるかも。

 

本『農場にくらして』

農場にくらして (岩波少年文庫 (511))

『農場にくらして』
アリソン・アトリー
上條由美子、松野正子 訳

『時の旅人』のカントリー・ライフが素晴らしすぎたアリソン・アトリーの自伝的作品。
少女スーザンを主人公に農場の四季を描く。
(原題は『カントリー・チャイルド』。こっちのほうが絶対いいのになー。)

『時の旅人』からドラマ部分を抜き取った感じで、
リンゴ部屋やバター部屋、キッチンガーデンのある農場は、
そのまま『時の旅人』の舞台でもあるだろうし、
仮装芝居の人たちがやってきて一緒に祝うクリスマス場面もよく似てる。

暗い森に潜む〈ものたち〉を恐れながら、恐れていることを気がつかれないように
通り抜ける場面は『グレイ・ラビットのおはなし』にもたしか出てくる。

そういう意味ではアリソン・アトリーの原点みたいな物語。
初期の頃に書かれた作品なので、文章が冗長でこなれていなかったり、
情報量が多すぎることもあり、ガツガツ読むような話ではないので、
一日に一章くらいののんびりペースで読みました。

部屋中の置物にヒイラギを飾るクリスマス、扉を開けて新しい年を迎え入れる新年、
カウスリップをつんでワインをつくる春、
敬意を保ちながら家族のように暮らす使用人たちとの関係などなど、
農場の暮らしが細部まで丁寧に描かれていて、
彼女の農場に対する強い愛が伝わってきます。

夢見がちな少女スーザンには仲の良い木と意地悪な木があったり、
家の中でいちばん話を聞いてくれるのが柱時計だったり、
その後のアトリーの幻想的なタッチが未完成ながら全編に発揮されてるのもよいです。

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本『雨はコーラがのめない』

雨はコーラがのめない (新潮文庫)

 

『雨はコーラがのめない』
江國香織
新潮文庫

『雨はコーラがのめない』というタイトルが素晴らしすぎて、「雨」というのが
江國香織の愛犬でアメリカン・コッカスパニエルの名前だと知って正直がっかりして
(書いてて気がついたけど雨の日に出会ったから
「雨」なだけではなく「アメリカン」もかかっているのか!)
手に取った本を棚に戻したこともあったのだけど、これは彼女のエッセイの中でも名作。

雨と音楽についてのエッセイなのだが、江國香織は「読者がその曲を知ろうが知るまいが、
そんなことはまったく関知しない(写真家・大野晋三の解説)」という感じで、
ただひたすら雨とともに好きな音楽を聴いている。

最初にでてくるカーリー・サイモンだけSpotifyで聞いてみたのだけど、
このエッセイを読むにあたってその曲や歌手を知っている必要はないのだ
と気がついてやめてしまった。

たとえばこんな感じ。
「ヨーロッパの街角を思いだす。古い、石の建物ばかりの。
時間は午後三時五十分くらいで、雨上がりで、やっと薄い日がさしてきたくらいの。
一人旅をしている若い人みたいな気持ちになる。(略)
スティングの曲は、それを思いださせる。」

「ようやく少し涼しくなったので、朝のコーヒーがおいしい。
スザンヌ・ヴェガを聴きながら、雨と一緒に(雨は水を)のんだ。
秋になると、スザンヌ・ヴェガ的なものが欲しくなる。
人が発散する気配やエネルギーを、きちんと落ち着かせてくれるようなもの。」

私は犬や猫を飼ったことがないのでほとんど親バカとしか言えない
無防備な愛情の注ぎ方は理解できないけれど、雨の日、または静かな夜に、
部屋の中で音楽を聴いている一人と一匹の姿はなぜかとてもいいなと思う。

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