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本『雨はコーラがのめない』

雨はコーラがのめない (新潮文庫)

 

『雨はコーラがのめない』
江國香織
新潮文庫

『雨はコーラがのめない』というタイトルが素晴らしすぎて、「雨」というのが
江國香織の愛犬でアメリカン・コッカスパニエルの名前だと知って正直がっかりして
(書いてて気がついたけど雨の日に出会ったから
「雨」なだけではなく「アメリカン」もかかっているのか!)
手に取った本を棚に戻したこともあったのだけど、これは彼女のエッセイの中でも名作。

雨と音楽についてのエッセイなのだが、江國香織は「読者がその曲を知ろうが知るまいが、
そんなことはまったく関知しない(写真家・大野晋三の解説)」という感じで、
ただひたすら雨とともに好きな音楽を聴いている。

最初にでてくるカーリー・サイモンだけSpotifyで聞いてみたのだけど、
このエッセイを読むにあたってその曲や歌手を知っている必要はないのだ
と気がついてやめてしまった。

たとえばこんな感じ。
「ヨーロッパの街角を思いだす。古い、石の建物ばかりの。
時間は午後三時五十分くらいで、雨上がりで、やっと薄い日がさしてきたくらいの。
一人旅をしている若い人みたいな気持ちになる。(略)
スティングの曲は、それを思いださせる。」

「ようやく少し涼しくなったので、朝のコーヒーがおいしい。
スザンヌ・ヴェガを聴きながら、雨と一緒に(雨は水を)のんだ。
秋になると、スザンヌ・ヴェガ的なものが欲しくなる。
人が発散する気配やエネルギーを、きちんと落ち着かせてくれるようなもの。」

私は犬や猫を飼ったことがないのでほとんど親バカとしか言えない
無防備な愛情の注ぎ方は理解できないけれど、雨の日、または静かな夜に、
部屋の中で音楽を聴いている一人と一匹の姿はなぜかとてもいいなと思う。

<読書メモ>

「どう?」
私は雨に訊いてみる。
「マイナーコードの力強さを感じない?」
声にちゃんと生命力がある、と雨はこたえた(ような気がする)。

音楽について不思議に思うことの一つに、ときとして音楽は灯りになる、
ということがある。レコードなりCDなりから最初の音がこぼれ落ちた瞬間に、
そこに灯りがぽっとともる、あの感じ。だからこうして音楽を聴いているとき、
私たちのうちの窓は、外から見ると、よそよりひときわあかるく見えるだろう。

「ほら、聴いて、この声」と言いながら抱き上げたりするのだが、
雨にはあまりぴんとこないようだ。ツイストを知らない世代だからなあ。
ツイストは格好よかった。もう、圧倒的だった。

 

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