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本『虐殺のスイッチ』

虐殺のスイッチ 一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか (出版芸術ライブラリー)

『虐殺のスイッチ』
森達也
出版芸術社

図書館の予約で困るのは、予約した本がいつくるかを選ぶことができないこと。
『魔女と魔女狩り』のあとに『虐殺のスイッチ』を読んでいる私を見て
妹が苦笑していましたが、たんにこのタイミングで図書館から本がきただけなのです。


とはいえ、魔女狩りも集団パニックによる虐殺のひとつです。
(本書では「高揚した信仰がもたらした集団ヒステリー」と書かれている。)


そのほか、関東大震災時の朝鮮人虐殺、ナチスによるユダヤ人大量虐殺、
スカルノ政権によるインドネシアでの虐殺、
カンボジアのクメール・ルージュによる大量虐殺、ルワンダのフツ族によるツチ族虐殺など、
近年の虐殺事件が紹介されています。


「人が人を殺してはいけない理由などない」というのは衝撃的だけど本当のことで、
通常の場合、宗教や理念などで人は人を殺さない。
それが戦争や虐殺になると簡単に人が人を殺す。


人は弱い生き物で、群れて生きることを選択した。
「集団化」は容易に「虐殺のスイッチ」になる。学校のいじめと虐殺は構造が同じ。
日本という国は集団と相性がいい。ネット時代は集団化のリスクを肥大化させつつある。
とここまでは納得。


「人はなぜ人を殺すのか」
「人はなぜこれほど残虐になれるのか」
「人はなぜか優しくて善良なままで人を殺すのか」といった命題を本書は考え続けますが、
それに明快な答えがでてるわけではありません。

でも考え続けることが大切。

捕鯨問題が「日本の食文化」ではなく
「ナショナリズムのアイコン」だというのも腑に落ちました。



<読書メモ>

大地町のイルカ漁をテーマにした
二〇一六年製作の映画『おクジラさま』(佐々木芽生監督)には、
アメリカ人ジャーナリストの「なぜ日本は捕鯨にこだわるのか」との質問に、
「欧米が反対するからよ」と日本人女性が答えるシーンがある。これに勝る答えはない。


過去の事例を知ること。被害側の声と同時に加害側の声も聞くこと。
正確な歴史認識を持つこと。繰り返し意識に刻むこと。

そして、悲惨な史実や現実から、自分たちの加害から、絶対に目を逸らさないこと。

デーヴ・グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』

データから日本の殺人事件を考える。
統計では、殺人で検挙された人のうち四分の三が男性だ。
いわゆる不審者による殺人事件は、実のところとても少ない。
殺す側と殺される側の関係は90%弱が知人で、そのうち半分以上が親族だ。
殺す側と殺される側の関係が近いからこそ、
「憤怒」や「怨恨」が動機の半分以上を占める
(以上、「研究部報告50」法務省法務総合研究所、2013年、「殺人事件の動向」を参照)。


「一人の男がこれほどの憎しみを見せるのなら、私たちはこれを上回る愛情を見せましょう」

「人を殺してはいけないということを示すために、なぜこの国は人を殺すのですか」

1960年、クレメントを密かに尾行していた
イスラエルの諜報機関モサドの工作員たちは、
彼が妻との結婚記念日に花屋で花束を購入したことを知り、クレメントをアイヒマンだと確信した。
その日はアイヒマン夫婦の結婚記念日と一致していたからだ。


ハンナ・アレント『イェルサレムのアイヒマン』

イスラエル警察の取り調べの際に、アイヒマンは
「私の罪は従順だったことだ」という言葉を残している。


善人だから殺さないのではない。悪人だから殺すのでもない。
これを分ける境界は善悪ではない。そんなものは取るに足らない。
大きな要因は業縁なのだと親鸞は唱える。
原因と条件。つまり環境さえ変われば、人は多くの人を殺す。
悪事をなす。制御は働かない。


学校のいじめと虐殺は構造が同じなのだと。それが社会全体で起きる。
異物と見なす理由は、動きの差異だけではない。皮膚や眼の色の違い。
言葉のイントネーション。あるいは自分たちと違う神を称えていること。
理由は様々だ。というか何でもいい。
本当の目的は、排除することではなく連帯することなのだから。

ただし、一つだけ条件がある。やられる側が少数であるか弱者であることだ。
その少数派の集団を、多数派の集団が攻撃する。


ギュスターヴ・ボン『群衆心理』

歴史を知ること。今の位置を自覚すること。
後ろめたさを引きずること。自分の加害性を忘れないこと。

 

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