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『津波の霊たちーー3・11 死と生の物語』

津波の霊たち: 3・11 死と生の物語 (ハヤカワ文庫NF)

『津波の霊たちーー3・11 死と生の物語』
リチャード・ロイド・パリー
濱野大道 訳
早川書房

最近出た文庫版をパラパラと読んでみて衝撃を受けたので単行本の方をちゃんと読んでみました。

学校に残っていた児童78人のうち74人、教師11人のうち10人が津波によって死亡した大川小学校。
その悲劇はもちろん聞いたことがあったのですが、あまりにも多くの人が亡くなった東日本大震災であり、原発のこともあり、当時の私は受けとめることができていなかったと思います。10年経ってやっと向き合うことができるようになったと感じます。

著者は20年以上、東京に暮らすジャーナリストで、日本への理解とともに、外国人としての客観性を保ちつつ、膨大なインタビューと取材をもとに大川小学校に何が起こったのかを描き出しています。

東日本大震災においては、迎えにきた親とともに津波にあって亡くなったケースがほとんどで、学校に残っていた児童が亡くなったのは大川小学校だけ、ということも今さら知りました。

幼い娘を失ったばかりの母親が高齢者と子どもたちの世話を優先させられるという事実、「がんばろう東北」というスローガンに対する違和感、子どもが生き残った親と亡くした親の間のみならず、遺体がすぐに見つかった親と探し続ける親の間にも生まれる亀裂、学校をめぐる裁判に見られる日本の民主主義の空洞、などなど、その視点の鋭さが圧巻です。
(これ日本人だとここまで批判的には書けなかったと思う。)

もうひとつのテーマである震災後に見られた心霊現象について、当時はマスコミがエンターテイメント的に消費している感じがして受け入れにくかったのですが、日本人の宗教観として、また生き残った人々の心情として、きちんと描かれていると思います。
(遺体を探す母親に警察が捜索の手がかりとして占い師や霊媒師からアドバイスをもらってはと提案することにびっくりしますが、やがて占い師から聞く死んだ子どもの言葉によって仕事に復帰していくあたりの話は簡単に片づけられるものではないです。)

プロローグで著者が見たというテレビの映像、津波が田んぼを、家を、車を飲み込んでいく映像、私も当時、会社で見ていました。ほぼリアルタイムの映像だったこともあって、真剣に見ることができず、「映画のCGみたいだ」と茶化しながら見ている一方で、あの車や家から人々は避難しているのだろうかと思ったことを覚えています。東京では多くの人が見たであろうあの映像をその後見ていないので封印されているのでしょうか。

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